万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

書籍

松丸本舗を見物してきました

何かと話題の松丸本舗を見物してきました。松丸本舗とは何かご存じない方はこちらあたりをどうぞ。松丸本舗丸善の丸の内店の中にオープンした店舗、ですね。地方民としては期待半分やっかみ半分でみていたのですが、奇跡的にまとまった休みが取れましたもの…

家具屋に本屋を売る/読書が趣味だなんて、この変態どもめ

今から本についてなにやら書こうというのだが、いまだに明確に考えがまとまっているわけではない。 今後も、私の考えは二転三転するだろう。 また、これから書くことは多分間違えている。とても自信がない。 しかし、他人の間違いから誰かがいい考えを引き出…

「服従実験とはなんだったのか」を読んで、そこから芋蔓的に

服従実験とは何だったのか―スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産作者:トーマス・ブラス誠信書房Amazon去年最後に読了した活字の本がこの「服従実験とは何だったのか」。服従実験、またはアイヒマン実験などとも呼ばれる権威への服従研究で有名なスタンレー・…

2009年に読んだ4コマ漫画十選

普通に2009年に読んで面白かった本のことでも書こうかなと思って、読了した本をリストアップしていたんだけれど、なんかSFと4コマばっかりになってしまったので、いっそのこと4コマだけを10作品挙げてみることにしました。 あ、「ラディカルホスピ…

「屈辱」というゲームが面白そうだぜ/どうせだから教養主義を楽しみながらいこうぜ

読んでいない本について堂々と語る方法作者:ピエール・バイヤール筑摩書房Amazon少し前に話題になった本だけれども、ピエール・バイヤールの「読んでいない本について堂々と語る方法」を少しずつ読み進めている。 その本の中で「屈辱」というゲームが紹介さ…

「あなたのための物語」/愛は子孫を残す

あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)作者:長谷 敏司早川書房Amazon「あなたのための物語」、読後一日たって、もう一感想を書いてみる。 ネタバレを含むので、ご注意ください。

ルポで実名を出す理由

光市の母子殺害事件で、犯人の実名を出したルポが刊行されるという。元少年の実名表記したルポ刊行へ 山口県光市の母子殺害事件 - 47NEWS(よんななニュース)まずこの見出しを読んで、ちょっと嫌な感じ、ネガティブな感情を抱いてしまった。 そして記事を読…

「星守る犬」についての雑感

星守る犬作者:村上 たかし双葉社Amazon 各所で泣かせると評判のコミック。取り次ぎもイチオシ。 いい本ですよ。本当に。 いや、しかし、何を今さらだけど、漫画アクションってすごいのなぁ。[asin:4575297445:detail] [asin:4575941468:detail] [asin:457594…

「遥かよりくる飛行船」バブリーな香り漂う実に奇妙な本

[asin:4652073054:detail]長いこと積んであった本をこの度めでたく読了。 変だ! この本、変な本だ! パンゲアやら地層やら化石やらといった単語が飛び交う架空の世界で繰り広げられるのは、なんとバブルの香り漂うOLのラブストーリー。 実家と仲が悪いヒ…

「地球46億年全史」は楽しい岩石列伝

地球46億年全史作者:リチャード・フォーティ草思社Amazon同じフォーティの「生命40億年全史」は、生命の進化をそれぞれの種の来歴としてではなく、その時代にどのような風景が広がっていたかとしてスナップショット的に捉えた面白い本だった。てえとジュラ…

「グローバリズム出づる処の殺人者より」は、やたら面白いピカレスクだ。

グローバリズム出づる処の殺人者より作者:アラヴィンド アディガ文藝春秋Amazonブッカー賞受賞という帯に惹かれて読んでみたら、やたら面白いピカレスクだった。ミステリはたまに読む程度なんだけれど、この本は多くのミステリファンに読まれるべきものであ…

話題の本は翻訳されていませんが、その著者を徹底的に批判した本なら翻訳されているので貼っておきますね。

On Off and Beyond: 書評:Real Education-人口の半分は平均以下なんか、自分の考えを主張するためにIQを枕に、確信犯的に煽ってるなあと、ちょっと胡散臭く見ていたら(あくまでこのエントリは本の紹介なので、このエントリを書いた方が胡散臭いと思ってい…

またまた伊藤計劃「ハーモニー」について/俺の幼年期はまだ終了してないZE!

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)作者:計劃, 伊藤早川書房Amazonまたまた「ハーモニー」の話。 過去に書いた「ハーモニー」についてのエントリはこちら。(「ハーモニー」は火薬と進化心理学の不幸な結婚である - 万来堂日記2nd、昨日に引き続…

雑誌の付録をいくつも取られて悔しいのでここに書く。/お前ら、腐女子じゃない

雑誌の付録をいくつも取られた。悔しい。 取られたのはまずGファンタジーの付録、黒執事の特製ブラックレターセットがひとつ。 アニメージュの付録、ソウルイーターのラジオCDがひとつ。 NEWTYPEについてた、なんかガンダム00の奴がふたつ(←調…

昨日に引き続き、伊藤計劃「ハーモニー」について/身も蓋もない問いかけが暴走するとき

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)作者:計劃, 伊藤早川書房Amazon昨日に引き続いて「ハーモニー」の話だ。 本書、及び「虐殺器官」(虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション))及びアンソロジー「虚構機関」(虚構機関―年刊日本SF傑作選 …

2008年に読んだ面白かった本のことでも書こうかと「既読本入れ用ダンボール」を漁ってみたが、本当にこの本を2008年に読んだのかいまいち自信が持てない件について

いま一つ自信が持てない。2009年は何を読んだかくらい記録を取るようにしよう…。 というわけで、2008年刊行じゃない本も混ぜています。 ライムスター宇多丸の「マブ論 CLASSICS」 アイドルソング時評 2000~2008作者:宇多丸白夜書房Amazonアイドルを…

入場料を取る本屋について空想してみる

入場料を取る未来の書店を考える上記のエントリを読んで、入場料を取る本屋について空想してみた。ただ、これは私が「こんなところがあったら行きたいなー」と思ったものであるので、ビジネスとして成り立つのかとか、既存の新刊書店を救うとか、そこらへん…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その11 スリランカから日本を眺めて(76〜79)

この一連のエントリでハヤカワ文庫JAの作品群をどう取り上げたものか、いやあ、悩ましいものがある。 無視できないカタログがそろっているものの、年代別に取り上げるようなアプローチを取るには欠落が多すぎるし、クラシックとも言える作品については他の…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その10 現代SF――「現代」ってなんのこっちゃ?(69〜75)

サイバーパンク運動が終わってもSFは続く。 90年代以降、わかりやすい大きな流れは特にない。もちろん、注目すべき流れや作品・作家はある。 言い換えると、まだまだきちんとした世界地図を誰も書いていない程度には、90年代以降の海外SFは混沌とし…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その9 Everybody Loves Cyber Punks?(61〜68)

と、いうわけで、80年代に華麗に登場したサイバーパンクは瞬く間に燃え広がり、SFを席巻した。 ……のか? 本当に? サイバーパンクはすごかった。それは確か。多くの才能を輩出したし、多くの影響をもたらしたし、それに続く作品や、他の作家が便利に使え…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その8 サイバーパンク農業(52〜60)

かつて、そこには豊かな森が広がっていた。最初期にそこに移り住んできた作家たちはその地域の利用可能な資源の豊かさに目を見張った。入植者たちは「SFktkr! これで勝つる!」と喜んだ。 仕留めやすい獲物も多かったし、果実ももぎ放題だった。 すぐ近く…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その5 男がどんなに偉くても女のSFには敵わない(36〜41)

ニューウェーブ以降、80年代に入るまでわかりやすい運動・流れといったものはないのだけれど、すぐれた作品は多く生み出された。 そんな中でも注目すべきは女性作家の台頭だと思う。 36・「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グィン 37・「所有せざる人々…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その7 ツンデレファンタジア(47〜51)

80年代初頭に、グレゴリイ・ベンフォードあたりが筆頭になってファンタジー汚染論なるものが唱えられたことがある。簡単にまとめると 「なんか最近、舞台を『遠い未来の他の惑星』に置き換えただけのサイエンスファンタジーばっかし幅きかせやがって。俺ら…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その6 我が赴くは古書の群れ(42〜46)

先のエントリで「というか、60年代後半から80年代を迎えるまでの作品群、なぜかいまでは入手しにくいものが多いのである」と書いたけれど、先のエントリで名前だけ挙げた作家たちの他にも、これから挙げる作家たちのことを念頭においてあのように書いた…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その2 赤コーナーより黄金時代の入場です!(5〜14)

英米のSFを語るときに、1950年代のことを黄金時代などと言ったりすることがある。 ようするに定番中の定番。鉄板中の鉄板。ミステリで言うならクリスティやらクイーンやら。歴史小説で言うなら司馬遼太郎やら藤沢周平やら。それくらいの作品が発表され…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その1 非英語圏強襲(1〜4)

以前からハヤカワ文庫はHOT HITと題してフェアを行っていたんだけれども、それがこの秋からハヤカワ文庫の100冊としてリニューアルするのだそうで。うち10タイトルをマニア垂涎の復刻・復刊が占めていたり、25タイトルが新しいカバーになったり…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その4 時代の流れに収まらない人たち(22〜35)

さて、なんとなく50年代、60年代ときて、じゃあ次は70年代なのだけれど、そういった流れを追うようなやり方だと、なかなか言及しにくいような作家・作品というのもでてくるわけですよ。 また、そんな作品・作家に限って好きだったり面白かったりするわ…

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その3 新しい波がやってきた! ヤア! ヤア! ヤア!(15〜21)

60年代に入ると、イギリス発でニューウェーブと呼ばれる流れが起こる。簡単に言うと、マンネリ気味なSF業界に生きのいい若手が小説技巧やそれまでなかった主題や実験を武器に殴り込みをかけた。で、ジュディス・メリルという有名な編集者が「英国、SF…

新潟市古町通 萬松堂賛歌

社会人になり新潟を離れて、もう早いもので10年経つ。碌に帰省もしていないので、街はすっかり変わってしまっているだろう。 私が学生時代を過ごした90年代の新潟市には外資系のレコード店が3店あった。タワーレコード、HMV、Virgin。特にタワーレコードに…

あなたもこの2冊で存分にSFを語ろう! /齟齬は雄弁に語る/「ディック」を「フィル」と呼ぶ権利を与えてやる。

SF小説を語るのに全てのSF小説を読む必要はあるか? - ハックルベリーに会いに行く 引用しよう。 だから、もし本当にSF小説を語りたいなら、読むのは一冊(多くて二冊)で良い。但し、それは重要な作品である必要がある。そして、それが重要な作品なのだとい…