憎しみ。
胸を焼き尽くすような、純粋な憎悪。
今の日本では、あまり縁のない言葉であり、感情であります。
このような言葉、このような感情は今の若者にとっては生々しすぎて、かえってリアルに感じられないものになっている。
私はそのように思っていました。
ついこの間までは。
そう、あの時までは。
忘れもしない、休日の昼下がり。本屋によって映画も見て、上機嫌の私に、突然にそれは襲い掛かってきました。
それは、急激で強烈な便意。
近くにあった私鉄の駅に飛び込み、額から脂汗を流しながら早足で歩き、やっとたどり着いたトイレ。まるで光り輝いているかのように見えた個室のドア。
ああ、これで俺もついに救われるんだ。この永劫の苦しみから、解放されるその時が来たのだ。
その、唯一の個室が塞がっていたときに感じた絶望。
そして、その中の人物に対して感じた、混じりけなしの純粋な憎悪。
そう、あれを憎悪と呼ばずして何と呼ぶのか。
もうすぐでタイムオーバーになるところでした。ほんと、危機一髪。