万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

森博嗣氏のよくあるタイプの新古書店批判。というか著作権があるからなんだというのか。 或いは むしろ燃やせ。

MORI LOG ACADEMY: 中古品の著作権

人気作家、森博嗣氏が図書館や新古書店に異議を唱えている。
ただ、少々耳にタコというか、もう聞き飽きたというか、よくあるタイプの凡庸な批判だ。
正直、この森氏の日記も最初に読んだときは頭に血が上ったが、風呂に入ってから読み直してみると、なんということもない。
おそらく、あまり深く考えずに、なんとなく自らの印象を書いただけなんだろうな。
この問題については、以前にエントリを書いたことがある。

万来堂日記2nd - 新古書店が金を払えと言われる二つの理由と、俺が金を払いたくねえなあと思う二つの理由

森氏の日記から引用すると

 中古販売自体は、僕はそれほど問題だとは考えていない。どんなものにも中古品市場はある。販売してはいけない、という道理はないだろう。それでも、「著作権」というものがあるわけで、たとえば、ただで譲ってもらったから、あるいは拾ったから、という理由で破格で売ることは、どうも変な気がする。中古品でも売るときには、コンテンツに対する著作権料を支払うのが道理ではないだろうか。図書館などで、貸し出す場合も例外とは思えない。

著作権があるからどうだというのか。どうも作家の人というのは、著作権を万能の道具であるかのように錯覚している人が多いような気がする。

例えば、パソコンには数多くの特許が関わっている。車もしかり。他にも様々な、中古品が流通しており、その中には特許とか、商標とか、様々な無形の財産、知的財産権っていうのか? それが関わっているものも多い。
その中でなぜ著作権だけが特別だと、中古品の流通や貸し出しからもキックバックを受け取れる特権があると考えられるのか、それがわからないまんまなのだ。
そこらへんの理屈なしに、「いや、著作権があるから」というのは理由にもなんにもなってはいない。著作権があるからなんだというのか。

このあと、更に森氏は続ける。

 よく、韓国や中国に対して、著作権の考えが浸透していない、と非難することがあるけれど、日本も相当にこの意識は低い。つい最近まで、パソコンのソフトなんかコピィし放題だったではないか。職場でソフトをコピィするようなことがあれば、解雇あるいは懲戒免職くらいの措置がいずれ一般的になるだろう。

おそらく、森氏は著作権についてあまり詳しくない。
「著作権は権利の束だ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。著作権はひとつの権利ではなく、様々な権利があつまったものだ。
中古商品の流通に関しては「譲渡権」というものが関わってくる。言ってみれば、著作物商品を流通させる権利だ。本、CD、DVDなどでは、小売からお客さんへ販売した時点で、著作権者の持つ譲渡権は消えてなくなる*1。それを中古商材からもお金を取れるようにしようと思うと、「消尽しない*2譲渡権」という、世界でも例を見ない新たな権利の創設が必要となる。

対してパソコンのソフトを勝手に複製するというのは「複製権」の話。
森氏が言っているのは「日本でも複製権に対する意識は低いじゃないか」ということになる。

「複製権に対する意識が低い」から「新たな『消尽しない譲渡権』を作るべきだ」。
これが理屈にもなっていないのは、言うまでもない。別々の権利の話を並べて置いているだけだ。


森氏はこうも書いている。

たとえば、書店で新刊のすぐ横に中古品が置かれていたら、それはやはり問題になるのではないか。

中古品と新品を同じ店で扱う、というのは、ゲームソフトやCDやDVDではよくある、ありふれた業態である。
本でも、まだ数は少ないがそれに挑戦しているところもある(Amazonもそのひとつだ)。
なんのことはない、本が特殊なだけだ。
トゲのある言い方をすると、本が乗り遅れているだけなのだ。


日記では新古書店だけではなく図書館も俎上に上げられている。
図書館に関してはさらに「公貸権」という、日本では導入されていない権利をまた新たに作ることが必要となってくるので、また中古品の流通とは別になってくるのだが*3、こちらのエントリを参考にしていただくと良いのではと思う。

かたつむりは電子図書館の夢をみるか - 図書館と出版と著作権

というか、私、このエントリで森氏の日記の存在を知ったし、公共図書館と大学図書館の立場の違いなどは勉強になった。ありがとうございます。


最後に、一番びっくりしたのが、以下の記述。

ただし、僕自身はまったく気にならない。自分の本が中古で売られようが、図書館でただで読まれようが、まったく気にならない(図書館よりは、中古販売の方が少しましか)。たとえば、「もう森博嗣なんか金輪際読むものか!」と本を山積みにして燃やされたとしたら、そちらの方が、古本屋や図書館よりは、多少良い状態かな、とは正直思うけれど……。

持ってる本を燃やしてくれってさ。
余計なお世話だ、馬鹿野郎*4


追記:森氏のサイトの掲示板を見たら、森氏自身がこんな発言をしていて仰天した。

立ち読みは、いずれ「犯罪」になるでしょう。

2007年5月12日 20時35分30秒の投稿である。
すまん、ミステリはあまり明るくないので、森氏って詳しくは存じ上げないのだけれど、
もしかして、すこしトンデモが入った人なのか?
だとしたらすまないことをした。真面目に反論などをせずに、もっとこちらも楽しむべきであった。

*1:映画はその公表に仕方が特殊だったりするので、例外だったりする。

*2:消えてなくならない、の意

*3:そしておそらく、森氏は別の権利が必要だということも意識してないんだろうが

*4:図らずも、「消尽しない譲渡権」が個人の財産権とぶつかることを示しているとは思うよ。まぁ、ありえない話だけどさ、「買った本は捨てずに燃やす」ことが法律で定められたら、激しく余計なお世話でしょう?