万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

「星新一 一〇〇一話をつくった人」

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人


星新一 一〇〇一話をつくった人」(最相葉月/新潮社)ようやく読了。
すばらしい本だ。星雲賞は多分取ると思うけれど、日本SF大賞も取るべきだ。
SFファンが読んだら面白いのはもちろんである。実は、戦後の日本SFの歴史を扱った本というのはそう多くは無い(本書にしてもそれを主眼に置いたものではない)。だもんで、「あのショートショートの大御所が、なぜにSF関係者の中でこうも畏敬の念を持って語られるのだろう?」とピンとこなかったりする向き(実は私もそうだった)は、疑問が氷解すること請け合いである。また、星新一のデビューに江戸川乱歩がかくも深く関わっていたというのも、興味深かった。
かつては安部公房と並び称されていた新進気鋭の作家がSFの下地を作り、SFブームが来た頃には期せずしてその本流から外れてしまっていた。作家星新一の栄光と悲劇は胸に迫るものがある。


しかしだ、本書の白眉は星が作家になる前、幸福な幼年期、戦争の影が忍び寄る青年期、戦後の混迷と活力みなぎる星製薬社長時代だろう。
それらが如何に星の生涯に影響を与えていたか。月並みな言い方になるが人間、星親一を読み解くにはそれが必須の鍵であることを、本書は鮮やかに示している。
御多分に漏れず、私も星新一を読み返したくなったのだが、読みたくなったのはショート・ショートではない作品群であった(故人が聴いたら悲しい顔をするかもしれないが)。ショート・ショートは子供の頃に読んだ。それを読み直すのも楽しみではある。しかしそれよりも、子供の頃には手が届かなかった長編、それも実父・実祖父のことを書いた伝記を読んでみたい。おそらくはそれこそが、その時点での星の総決算であったはずなのだから。