万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

RFIDについて。 もしくは我が転向

RFIDっつうのがありまして。ICタグとか電子タグとか呼ばれたりもしているんですが。
まあ、詳しくはウィキペディアの該当項目貼っとくので、そちらどうぞ(RFID - Wikipedia)。
いや、なんかRFIDを出版流通に導入する(てか本に埋め込む)とか、図書館に導入するってな話がありましてね。
実証実験やってまして、またね、効果がでてるんだわ。
家電業界では万引きへの効果も実験していたり(家電業界におけるUHF帯電子タグ実証実験 (application/pdf オブジェクト))。
図書館でも行方不明の本が減っていたり(JOHOKANRI : Vol. 49 (2006) , No. 3 p.113-122)。
出版業界でも導入実験をやって作業の効率化に成功したりしている(平成18年度出版業界における流通効率化の実証実験
*1
で、便利そうじゃないですか。盗品の持ち込みを減らすっていうのは、私の勤務する新古書店の悲願でもありますし(そうなんですよ?)。
しかしそんな一見夢の技術RFIDにも反対というのがでておりまして、これが個人情報漏洩についてのもの。今は書籍の話をしておりますので書籍に限定いたしますと、あなたがさっき買ったその本、かばんの中に入ってるけど、このリーダーで読み取りますとあら不思議、本に埋め込まれたRFIDが反応して、あなたがどんな本を持っているかわかってしまうというものです。
これがエロ本くらいならまだいいんでしょうが、例えば、大臣のカバンの中にロリ系のエロ本が入っていたりしたらまずいでしょうし、朝日新聞やらわしズムやらが入っていて痛くもない腹を探られるのも気分が悪いものでありましょう。
最近だと(書籍での話ではないけれど)こちらのエントリが話題になってましたな(【海難記】 Wrecked on the Sea 続・工学的不安に抗して〜taspo導入は何を意味するか)。
私としては導入してもらいたいですからね。「じゃあ個人情報漏洩の問題さえ解決できたらいいんだな!」ってな勢いで、色々検索し始めたわけですよ。
で、いろいろ読んでみて、当初とは正反対の結論に達したわけです。つまり、「現時点での図書館、および小売店へのRFIDの本格導入は時期尚早である」。
いっときますが、プライバシー情報の問題が理由ではないです。それはそれで重視すべきなのはもちろんですが、それより以前の問題。


まずは総務省のガイドラインってやつを読んでみたんですな(「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」の公表)。
もちろん、プライバシー情報についての問題も取り上げられています。
しかし、ウィキペディアの方で言及されていた問題には言及していなかったんですな(まあ、これはプライバシー保護ガイドラインですから、当然と言えば当然なんですが)。各種実地実験で配慮されているのは
このガイドラインですから、ウィキペディアで言及されていた問題には配慮されていません。まあ、なかなか実地実験で配慮できる事柄でもないとは思うんですが。
もったいぶるのはやめて、ウィキペディアから該当箇所を引用しましょう。

電波の影響の考慮
無線ICタグは「短距離無線機器」と見なされており,一般無線機器と同様の規制を受ける。電波法に従うだけでなく、人体の防護、植込み型心臓ペースメーカを含む医用電子機器への影響、EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁両立性)規格などに注意しなければならない。


なんかケータイがペースメーカーに影響を与えるなんて話を思い出しますが、実はまったくそのとおりでありまして。
総務省ももちろんそのことには気が付いていまして、きちんと調査を進めています。
こちらは平成17年に実施された調査です。こちらではRFIDリーダーを22センチ以内に近づけるとまずいよ、なんていう結論が出ています。おいおい。
さらにこちらは平成19年の調査。こちらの場合、一部の機器が一部のペースメーカーに対して、最大75センチの距離で影響を及ぼすとされています。おいおいおい。
より詳しいこちらでは、ゲート型読み取り機器(おなじみ防犯ゲートですな)の安全な使用ガイドラインとして以下の項目が挙げられておりまして。引用しますね。

(1)ゲートタイプRFID機器の対応策
? 植込み型心臓ペースメーカ等装着者は、ゲートタイプRFID機器が設置されている場所及びRFIDステッカが貼付されている場所では、立ち止まらずに通路の中央を真っ直ぐに通過すること。
? 植込み型心臓ペースメーカ等装着者は、ゲートタイプRFID機器の周囲に留まらず、また寄り掛かったりしないこと。
? 植込み型心臓ペースメーカ等装着者は、体調に何らかの変化があると感じられる場合は、担当医師に相談すること。
? 植込み型心臓ペースメーカ等に対するゲートタイプRFID機器の影響を軽減するため、
今後、更なる安全性の検討を関係団体で行っていくこと。


いや、「立ち止まるな。寄りかかるな」って。
そもそもペースメーカーをつけているような人、歩くのがとても遅くても不思議ないんですから……。
書店は老若男女が訪れる場所ですし、それをいったらたいがいの小売店がそうです。ましてや図書館にいたっては公共的な性格が強い場所。
さすがに、そういった場所に本格的に導入するには、まだ抵抗がある技術なんじゃないかな、と思ったんですよ。(こちらの報道(UHF帯ICタグの店頭利用が困難に:ITpro)によると「総務省は基準が厳しすぎる」という意見も上がっているようですが、いや、これは総務省の肩を持ちたいです。自分の店で倒れられたらとか考えると怖すぎる)。


さらに言いますと……いや、私は文系人間ですから、技術的なことはさっぱりなんで、まるっきりナンセンスな心配だったならぜひ指摘してほしいんですけど……なぜ上記の調査でRFIDそのものではなくてRFID機器の方が調査されているかと申しますと、RFIDはそのリーダーに比べると実に微弱な電波しか放っていないから、だそうなんですね。まあ、仕組み的にもそれには納得です。すでに医療の現場にもRFIDは導入されているようですし、RFIDを体内に埋め込んだりもされているようですし(人体埋め込み用IDチップ、救急治療室やクラブに進出:ニュース - CNET Japan)影響はほぼ無視できるほど微弱なものなんでありましょう。
でもね、心配なんですが、もしRFIDが本格的に書店や図書館に導入されたとしたら、ですよ。
例えば私もちょくちょく利用させてもらっている京都河原町のブックファーストの在庫量は30万冊だそうです(こちら)。
例えばこちらが図書館の蔵書数ランキングだそうでございます(日本の図書館蔵書数ランキング - Wikipedia)。
つまり、本格的にRFIDが導入され普及した場合、数万とか数十万とか、下手をすると百万以上のRFIDにとりか囲まれる状況が現前するわけです。しかも徒歩で移動できる範囲内に密集して。
いや、「いかに密集しようが、原理的にRFIDが影響を与えるなんていうことはありえない!」というんなら、私の心配は無知ゆえの杞憂という奴ですから、それに越したことはないんですよ。
でも、そんな状況を想定した実験を見つけることが出来なかったのも事実なんです。
もし万が一にでも億が一にでも、私みたいな素人の心配がたとえ一部でも的中しちゃった日には目も当てられませんよ……「ペースメーカーお断り」の書店や図書館に存在価値なんてあるのかどうか、疑問に思います。



と、いうわけで。
上記の心配事が理論的にまるっきり否定されたり、調査してみてやっぱり大丈夫だったよとか、ここを改良したら全然平気になったよとか言わない限り、図書館および書店(というか小売店全般)へのRFIDの導入は時期尚早じゃないかというのが、現時点での考えです(でも、最低限防犯ゲートの問題は完全に解消しないとダメだと思いますけど)。
逆に、お客さんの目に触れる以前の段階での流通過程でRFIDを導入し作業を効率化することに関しては、賛成です。
だれか、技術に詳しい方。私みたいな人のしょうもない心配を一笑にふしていただけるとありがたいんですが、よろしくお願いいたします。

*1:なお、これらの実験結果は[http://d.hatena.ne.jp/kongou_ae/20080105/1199517604:title=出版ICタグは物流・流通を効率化することがメインです。 - 60坪書店日記]経由で知ったものです。id:kongou_aeさんありがとう! ダンボーつくりがんがってね!