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万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

グールド「人間の測りまちがい」は全人類必読の名著だお


ご存知グールドの「人間の測りまちがい」が嬉しい文庫化。この機会に全国民この本を読むといいと思うお。
本書の邦訳につけられた副題は「差別の科学史」。
ごく簡単に言うと本書は、科学が人種差別や階級差別・および差別的な政策にどのようにして理論的バックボーンを提供し、かつ、その研究自体もいかに差別の影響を受けていたかを丁寧に論じたもの。
言い換えよう。素朴なイメージでは政治とは無縁で、事実の探究・真理の探究を第一義としているはずの科学というものが、実は政治と相互に大きな影響を与えあっているということを、事実を元に論じた本だ。
グールドは論点を明確にするために、取り上げるケースを絞った。つまり、人間の知能というものが一直線にプロットでき、それが遺伝的に固定されているという主張を、19世紀からさかのぼって検討しているのだ。
グールドが巧みな点は(そしてこれは半ば科学史も専門にしているグールドの特徴でもあるのだが)、それらの理論を現代的な視点や現代的な手法・知識から切って捨てるのみならず、当時の視点からも指摘可能な(そしてしばしば実際に指摘されている)弱点を指摘している点だ。つまり、それらの理論は当時も、曇りない目で検討されていたならば、主流にはならず社会にインパクトを与えるはずもなかった理論たちなのだ。しかし、史実は違う。それらは社会にインパクトを与え、実際の政策に反映されたのだ。アメリカではIQテストによって移民が制限され、イギリスではIQテストによって若者たちの進学先が振り分けられた。
さらに痛ましいことに、断種手術をされた事例も、本書で取り上げられている。すべて20世紀の話だ。
さらに言い換えよう。曇りない目など、想像上の存在に過ぎない。



えーとね、気楽で面白いトリビアでもなければ、他人事でもないのだよ、この話題って。
提出された数字が曲解され、独り歩きし、現実の政策に反映されていこうとしている例なんて、ネットあさってりゃあ腐るほどでてくるでしょ?
その逆に、数字が提出される前の段階で数字に意図的な操作が加えられているのではないかと思われるような例、これも見たことがあるという人、結構多いでしょ?*1
ネットが普及し、政治や政策の細かなところまで情報が得やすくなった今の時代だからこそ、本書は広く読まれるべきだと思う。

*1:さらに恐ろしいことに、無意識にバイアスがかかったりもする!!