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万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

買切りと時限再販制を併用するべきだと思うんだけど、少数派なのかね?

書籍 出版業界関連


新文化にこんなニュースが載っていた。


日販、古屋文明社長が「委託から買切りへ」


1月7日、都内のホテルで行った「新春を祝う会」で古屋社長は40%を超える返品率を指摘した後、「これまで再販と委託制度が業界の繁栄を支えてきたが、特に委託制度は行き過ぎた仕組みになっている。業界3者の誰も幸せになれていない」と言及。3者のマージン配分の再編にも触れながら、「委託から少しずつ買切りに手を付けていく」と語った。


はてなブックマークユーザーではid:asakura-tさんがやはり委託販売制を問題視していた記憶がある(たとえばこちらでのコメント)。
では、委託販売制が買い切りに移行したらみんなハッピーか? もちろん、そんなことにはなりませんよ。価格に手をつけないままでの買い切りへの移行は、ほぼ間違いなく機能不全を起こす。


私は小売りの経験しかないので、小売の話をしよう。
小売りが小売価格を下げるのは何のためか。その商品をもっと多く売るためだ。
では、何のために多く売ろうとするのか。
よく見られるのはふたつ。
ひとつが利益を上げるため。
ひとつが在庫を減らすためだ。


前者は競合店との価格競争をイメージしてもらうとわかりやすい。競合のあの店よりも安いですよ、と。で、客数を増やそうというのだな。往々にして、特定の商品だけで見ると赤字になるような値引きってのもあるが、あれですよ、昔ながらの売り上げ=客数×客単価って奴。時に少々強引な値下げででも客数を増やすことで売り上げ全体にプラスの効果をもたらそうという試み。


後者は在庫処分だ。スーパーで閉店間際になるとお総菜にぺたぺた値引きシールが貼られるのは、その在庫を残してもマイナスにしかならないから。傷んでしまうからねぇ。
在庫が多すぎて仕事の邪魔になったり、コストだけくったりするから、捨てるよりはましという具合で在庫を減らそうというわけだ。小売りの話とはちょっとずれるけれど、出版社が売れない本を裁断するのもそう。場所だけとって、税金ばっかりかかりやがる。だったら捨ててしまおう、と。まあ、捨てるよりは売った方がましというのは、実は出版社も気が付いているわけだけれど。


で、この二つは結びつく場合がある。ハリーポッターの在庫が店でだぶついていますなんて言う話を思い浮かべてもらうと理解しやすい。
売ろうと思って在庫をたくさん仕入れる。予想よりも売れなくて余る。余った在庫をどうしよう、という話だ。


さて、委託販売制だけがなくなるとどうなるか。
まあ、返品率は下がるでしょう。
で、売れる数だけを本屋が発注するのなら、なにも問題は起こらない。もちろん、そんなにうまくいくわけがないのは火を見るより明らかだ。それが出来るんなら、そもそも売れる数だけを刷ることだってできるよね(笑)。出版社も書店も、そんな神業みたいなこと出来ない。
徐々にか急激にかはわからないけれど、在庫は書店を圧迫し始める。そうするとどうするか。値引きすることで在庫を調整しようというのができないなら、まあ、仕方なく捨てるわな。そんで、同じ愚を犯さないように仕入の適正化を図る…というと聞こえはいいけれど、要するに仕入れる量を減らす。
当然の対応だ。
そしたらびっくりするのは出版社だ。おいおい、返品は減ったけれど、そもそも部数が減ったじゃありませんか! 聞いてないよ! 新刊を自転車操業で出さなきゃいけないのに!
かくして、出版業界のダイエットは続くわけだ。めでたしめでたし。どっとはらい


引用した記事で、委託販売ってシステムが業界三者(出版社、取次、小売店)のみんなが幸せになれないってな感じのことが書いてあるけど、委託販売制のみを縮小するってのは、実は三者のうちの二者、出版社と取次のコストのみを低くするんだわな。小売店のコストは、場合によっては高くなる。
で、あるから、再販制度の廃止……に抵抗があるのなら、時限再販の積極的な導入をするべきだと思う。
絶対に余剰の在庫を抱えないなんていうのは神様だけなわけで、ご存知の通り、出版社も取次も書店も神様による運営は実現されていない。
余剰の在庫を減らすための手段ってのがどうしたって必要なわけで、それが小売りにとっては返品だったわけだ。
それがあまりに行きすぎて問題だ、そんなんだめだってんなら、別の手段が必要でしょう、と。だったら旬を過ぎた商品は値下げさせてくださいよ、と。
逆にね、買い切りで、なおかつ書店が勝負に出ようと思ったら、せめて時限再販でもなければやってられませんよ? 小売が勝負にでないとなると、これは勝負しようという出版社は自前で販売網なんとかしていただくしか。そうさな、自社におけるネット販売で頑張っていただきますか! Amazonやセブン&ワイに負けないように頑張って! 応援してます!
結構現実的な解だと思うんだけどね。同様の意見を、なかなか見ることがないんだよなー。同じことを言っている人がいないわけはないんだけど。少数派なのかね?