万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

三田誠広氏発言集

昨日はやっつけぎみに5分ほどでエントリを殴り書いたのですが、フォローも兼ねて、いい機会なので三田誠広氏の発言を振り返ってみましょう。
ITmedia News:「著作権保護期間の延長を」――権利者団体が要望書 ネット時代も意識
2006年9月の記事です。

「日本の作家は20年分の権利をはく奪されており、創作意欲の減退につながる。海外の著作者からは『なんで日本は保護期間が短いんだ』と言われ、日本は著作物を大切にしない国だと思われてしまう」――協議会議長で、日本文芸家協会三田誠広氏はこう訴える。

著作権の保護期間延長がクリエイターの意欲にいい影響を与えるという、インセンティブ論って奴ですね。

著作権保護期間、作家が選べるシステムを」――延長めぐる議論再び (1/2) - ITmedia News
これは2007年3月の記事です。

 延長賛成派の三田さんは、ネット上に権利者を網羅するデータベースを構築し、権利者を簡便に検索・許諾が取れるシステムを構築することを提案。この仕組みができれば保護期間が50年でも70年でも、手間はそれほど変わらないはずだと語る。

 データベースには、自分の作品の2次利用の形態を、作家自身が指定できる仕組みを内包。例えば「ネット上の再配布はフリーにする」、「死後はパブリックドメインにするが、著作権は保持するから、勝手に書籍化しないように」などと指定できるようにする、という。

 著作者が無名で、亡くなってから何年も経ったものなど、権利者を特定しにくいコンテンツについては、簡便な裁定制度を新設して安価に利用可能になるよう、文化庁などに働きかけていく。「著作者の多くは、死んだ後まで著作権料が欲しいとは思わないだろう。クレームも少ないのでは」(三田さん)

これについては、先日の報道(著作者検索ポータル、権利者団体が開設 保護期間延長は「金の問題ではない」 - ITmedia News)でこんな発言がでていますね。
 

「07年当時は楽観視していた。保護期間延長はすぐに決まり、システムの予算ももっと取れるだろうと考えていた」と三田さんは振り返る。サイト構築費用は300万円。協議会の全団体が拠出した。

さて、2007年3月の記事からまた引用します。

著作者の意志を尊重し、著作物の同一性を守るために延長が必要という意見もある。「孫子のために財産を残したい、という訳ではない。これは著作物の人格権を守るための議論だ。例えば谷崎潤一郎の保護期間がもうすぐ切れる。切れてしまえば、谷崎の作品を書き換えてネットで発表するようなファンが出てくるだろう。もっとエロくしようとか、もっと暴力的にしようとか。文学はWikipediaではない。書き換えられては困る」(三田さん)

でました! でました谷崎!
中山信弘先生の「著作権法」(有斐閣)415ページから引用しましょう。

死後の著作者人格権の保護期間に限定はなく、理論上は永久に存続するが、著作者が自然人の場合、請求できる親族の範囲が二親等までと限定されており(116条1項)、また遺言により請求できる者が指定されている場合には50年を経過した後(50年経過時に遺族が存する場合にはその存しなくなった時)においては請求できないので(116条3項)、請求権は事実上ある程度の期間経過後に消滅する。

ということは、三田氏のいうような問題については、保護期間よりも遺族がまだご健在かどうかの方が優先されるような気がいたしますね。


保護期間延長の是非を問う議論がスタート、文化審議会小委
これは2007年6月の記事です。

三田氏はヒアリングでの発言に対する印象として、「多くの発言者が、保護期間の延長でどのようなインセンティブがあるのかという話をされていた。多くの方は金銭をインセンティブと考えていると思うが、著作者としてはそれは違うのではないかと考えている」と発言。「多くの著作者はお金のためではなく、評価されたい、リスペクトを受けたいという夢を持って創作しており、それが創作意欲になっている」として、インセンティブという言葉はもっと幅広く捉えてほしいと訴えた。

同じ記事内で、中山信弘先生に早速反論されているのが微笑ましいです。

東京大学中山信弘教授は、「ヒアリングやこれまでの話を聞いていて、著作権法の基本的な構造を理解していない方があまりにも多いことに驚いた」とコメント。「議論している著作権の保護期間は、著作財産権の問題。リスペクトといった話は著作人格権の問題だ。世界的に見ても、期間の問題がリスペクトの問題であるといった話は聞いたことがない」として、この場では著作財産権という財の問題についてのみ議論すべきだと主張した。

三田誠広氏との噛みあわない問答 - 池田信夫 blog
2007年7月25日付で投稿されたエントリです。

問「これまで文芸家協会は、著作権の期限を死後50年から70年に延長する根拠として、著作権料が創作のインセンティブになると主張してきたが、今日のあなたの20年延ばしても大した金にはならないという発言は、それを撤回するものと解釈していいのか?」

三田「私は以前から、金銭的なインセンティブは本質的な問題ではないと言っている。作家にとって大事なのは、本として出版してもらえるというリスペクトだ。」

問「しかし出版してもらうことが重要なら、死後50年でパブリックドメインになったほうが出版のチャンスは増えるだろう。」

三田「しかしパブリックドメインになったら、版元がもうからない。」

問「そんなことはない。夏目漱石福沢諭吉パブリックドメインだが、全集も文庫も出て出版社はもうかっている。リスペクトもされているじゃないか。」

三田「・・・」

問「松本氏は模倣を非難するが、『銀河鉄道』は宮沢賢治の模倣じゃないか。」

三田「松本氏のように原作の価値を高める模倣はいいが、悪趣味なパロディはよくない。」

問「いい模倣か悪い模倣かは、だれが決めるのか?」

三田「遺族だ。」

問「遺族が死んだら、誰が決めるのか?」

三田「・・・」

問「このように著作権というのは、他人の創作活動を制限する。ブログには数千万人の著作者がいて、YouTubeには数千万本のビデオクリップがあるが、それを著作権訴訟が脅かしている。わずか数千人の小説家の業界エゴで、著作権法の強化を求めるのは無責任ではないか。」

三田「小説とブログは違う。われわれには芸術家として、文化を後代に伝える義務がある。」

クリエイターが文化を伝える? いや、先行作品に影響を受けて新たな創作を発表するといった点では確かにそうだと思うのですが……そうか! 三田家には三田誠広アーカイブがあるのですね!
これからの芸術家は自前アーカイブ必須でございますよ!


著作権の保護期間延長問題、権利者側への反論相次ぐ――文化審:ITpro
2007年9月の記事です。

三田誠広委員は、「谷崎潤一郎江戸川乱歩横山大観などはあと数年で保護期間が切れる。彼らの遺族が受け取る著作権使用料は、それぞれ年間100万円を超える額だ。これらが突然切れるのはショッキングなこと。遺族の権利を守りたいし、それが作家のインセンティブ向上をもたらす」と、従来の主張を繰り返した。

でました! 谷崎と乱歩でました!
この場においては、お金とインセンティブの問題であったようです。
また、こんな記述も。

権利者団体17法人が共同で8月31日に発表した著作物検索用ポータルサイトと権利者データベースについては、17法人の取りまとめ役である三田委員が構想を説明した。しかし保護利用小委の委員からは、構想通りにデータベースの整備が進まないことを懸念する声や、費用対効果の見込みが甘いのではないかとする疑問の声が相次いだ。


「100年後も作品を本で残すために」――三田誠広氏の著作権保護期間延長論 - ITmedia News
これは2007年7月25日の記事です。

「作家にとって創作のインセンティブになるのは、作品が本として残ること。50年、100年後も作品を出版してくれる版元の期待に応えたい」

講演の冒頭で「きょうの参加者は、著作者側の権利をあまり拡大しない方がいいと考えている人も多いと思うので、講演するのは気が重い」と語り始めた三田さんは、「創作のインセンティブはお金ではない」と繰り返しながらも、「保護期間が切れると版元がもうからない」などとと訴えた。

同じ日に投稿された池田信夫氏のエントリで、突っ込まれて無言だったとされている理屈ですね。版元! 儲からない!

三田さんは「保護期間が切れた途端に、心ない人によって思いもよらない形で作品が利用されることもある。本は、デザイナーや編集者とともに、手触りや書体など細部にまでこだわって作られる芸術作品であり、そこに作家として参加できることが創作活動におけるインセンティブだ。わたしにとっては紙に印刷された本という形であることが重要。それにパブリックドメインになれば、出版元がもうからない」と反論した。

その上で「著作権はいつか切れるものなので、世界の標準が50年ということなら仕方ない。しかし、例えば川端康成谷崎潤一郎など日本の有名な作家の著作権だけが50年で切れてしまうのはもったいない」と語り、世界の有名な作家と同等に保護されるよう、世界標準に合わせるべきだと主張した。

そろそろ発言の既視感が顕著になってきましたでしょうか。


著作権保護期間の延長問題、隣接権や制限規定への意見が挙がる〜文化審
これは2007年9月の記事です。

日本文芸家協会常務理事の三田誠広氏は、「現在流通しているコンテンツのほとんどは最近作られたもので、全体から見れば古いものはごくわずかであり、保護期間を延ばすことによって利用者に与える損失もごくわずかではないか」とした上で、延長した場合の問題は許諾を得るためのコストが増加する点にあると指摘。こうした問題を、これまでに議論してきた裁定制度の簡易化やデータベースの整備などを進めることで、利用者側からも延長されては困るという声は少なくなるではないかとした。

三田氏も「著作権は非常に強い権利であるので、それが50年で切れるのはありがたい、延ばすのは困るという話にもなる。そうした強い権利というものがそのままでいいのかという点については、議論する必要があると思う」とコメント。また、提案している利用円滑策の実現可能性については、「たとえば『裁定制度の簡易化は無理だ』と文化庁が判断するのであれば、そもそも実現できない話ということになってしまう」として、今後は円滑策に対する文化庁の意見も求めていきたいと訴えた。

お?
三田氏のスタンスが変わってきたのでしょうか。譲歩の時期でしょうか。

津田さんが絶望した文化審議会での里中委員・三田委員らの発言 - Copy & Copyright Diary
2008年9月付けで投稿されたエントリです。

今後,10年以内に著作権の切れるというか,死後50年たつ作家として,例えばアルベール・カミュとかヘミングウェイとか,谷崎潤一郎というビッグネームがあります。このうち,アルベール・カミュとヘミングウェイは,もう死後70年ということになっておりますから,まだまだ権利は保護されているわけですけれども,谷崎潤一郎だけがあと数年で切れてしまうと。このことをどういうふうに捉えるのか,谷崎潤一郎の作品は50年分の価値しかないのか,これは日本人が文化というものをどういうふうに捉えているかということにかかわってくるだろうと思います。

 それから,アメリカの学者はこういったという話が多かったのですけれども,アメリカは既に70年になっているわけです。これは,経済学の観点よりも作品と作家を大切にしようという,そういう文化そのものがアメリカにあるからだろうと思います。

 ですから,そういうものを無視して経済学の観点だけで議論をするというのは限界があるだろうというふうに思われます。

……元に戻った。


そして、最新形が先日のこの報道です。
著作者検索ポータル、権利者団体が開設 保護期間延長は「金の問題ではない」 - ITmedia News

「欧米では70年に延長されているのに日本だけ50年で切れている。アルベール・カミュアーネスト・ヘミングウェイ谷崎潤一郎江戸川乱歩がもうすぐ死後50年を迎えるが、カミュやヘミングウェイの著作権保護期間はあと20年残り、谷崎や乱歩は切れる。谷崎や乱歩が、カミュやヘミングウェイに劣るとは思っていない。日本だけ保護期間が短いのは、創作者としてたいへん残念だ」


昨日書いたエントリ「三田誠広氏がとうとうおかしなこと言い始めた件について」は、そのタイトルを「三田誠広氏がまたまたおかしなこと言いだした件について」とするべきでありました。謹んでお詫び申し上げます。
あ、あと相互主義については上記のとおり、そもそも三田氏がほとんど言及せずに「谷崎が切れる」ばっかり強調しているので、わざと無視したですよ。

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