万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

新刊書店での本の買い取り/まあ、高価買取ってのはニュースにしやすいんだろうけどなぁ

新刊書店「冬の時代」…古書買い取り販売に活路? (1/2ページ) - MSN産経ニュース

買い取り価格は、発売6カ月以内の文芸書なら定価の30%が相場だが、2巻合計で200万部を超すベストセラーになっている村上春樹さんの最新長編『1Q84』は「在庫が不足している」(同店)ため、定価(各1890円)の半額を超す1000円を提示。売る人にとって購入時との差額である890円で読めるというお得感をPRし、新しい本の購買意欲をかき立てる。

 高価買い取りを打ち出したのは、新古書店・ブックオフへの対抗心のほか、新刊販売との相乗効果を見込むからだ。大本哲男店長は「あとで高値で売れると分かっていれば、購入を迷っていた新刊にも手が伸びる。読み終えた本を売って得たお金を元手に別の新刊を買ってくれる固定客も増えており、新刊販売への悪影響はない」と言い切る。


まあ、高価買取は目を引くからニュースにもしやすいわなぁ。
高価買取は確かに大事ではありますよ。よく売れる商品を狙って仕入れることは集客につながる。
ただ、実感としては、そうやって高価買取で集まった商品以上に、高価買取ではない商品に対して労力を払わないと、なかなかうまくいかないやね。ベストセラー偏重を中古の世界にも持ち込んでしまうと、在庫リスクの面でも利益の面でも痛い目にあう。
熟練者がいなくても機能するものという風に理解されていることが多い新古書店のビジネスモデルだけれど、こと商品の棚入れ・陳列に関しては、熟練こそがものをいう分野でございましてね。
山のように買い取りで入荷してくる何の脈絡もないような本の山の中から、いかに売れそうな本をピックアップするかというのは、店舗での経験に大きく依存するのです(もちろん、新古書店における単品管理の大きな遅れ、というのもそれを後押ししているわけではありますが)。
さらに言うと、新刊書店における「売れ線」の感覚と、新古書店における「売れ線」の感覚はかなり異なったりする。
具体的には、「希少とは言わないまでも、いまとなっては中々新刊書店ではお目にかかることができないような本」を如何に売っていくか、ですよ。逆に言うと、そういった本ってのは結構あるわけで。
そうさな、例えばだけれど、急に「泣くようぐいす」が読みたくなったり、「とっても!ラッキーマン」が読みたくなったり、「きんぎょ注意報」が読みたくなったりしたとして、いや、なかなか街の本屋さんではお目にかかれないですよ、多分だけど。
そういった商品をデッドストックにすることなくいち早くピックアップして、お客さんに提示するってのがとても大切。
また、新古書店ではコミックの巻数がそろわないってのがよく言われるけれど、オペレーションがうまくいってない店なんかを覗いてみると、まさに棚に並んでいない巻がストックに眠っていたりしてね。そういったものもどんどんなくしていかないといけない。これのチェックってのも、普段から棚に張り付いていないと難しいですわな。
そういったノウハウを持ったスタッフの蓄積という点でいうと、既存の新古書店のほうが一枚も二枚も上手を行くわけで。さあ、併売を武器にそこに割って入ろうっていっても、一筋縄ではいかないと思うぜ、と。


で、ついでに言うと。

永江朗・早稲田大教授(出版文化論)は「『本が売れない』といわれるが、買い取りで家庭の本棚にスペースを作れば、購買意欲もわく。古書販売は新刊よりも利益率も高く、生き残りのための武器として使ってくる書店は増えそうだ」と予測する。

確かに本は溜まるとすごいことになるけれど、本を溜めるほど買ってくれる人の購買意欲が下がったから、今「本が売れない」と言われているのだ、という見方は、非常に危険な気がするなぁ。