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万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

これでブックオフを潰すわけにはいかなくなったね

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産業/【インタビュー】ブックオフコーポレーション社長 佐藤弘志さん(39) - FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE

このインタビューで佐藤社長は(しかし若いですね!)、二つの方針を明らかにしている。

当社としては現在、2つを提案している。一つが、本の著者に創作活動が活発になるような何らかの利益還元を行いたいことだ。現在の法律では著者への著作権料は新刊本だけで、中古本には及ばないため、“ブックオフが栄えても著者がやせ細っていく”との批判にさらされてきた。どうやって還元するのか、その道に詳しい大株主にアイデアをいただきたいと考えている

もう一つは、ブックオフから新刊本を扱う書店に顧客を誘導したい。例えば、中古本コーナーに関連の新刊本を告知したり、新刊本のランキングを掲載したりなどだ。ブックオフにくる方は本に興味がある人だから、ブックオフ店頭を媒体として利用すれば、新刊、中古それぞれの顧客を相互に送客できる可能性がある。第1弾として、来月に名古屋市に開設する大型複合店に新刊、中古それぞれの店を隣接して配置し、実験店としてノウハウを集積するつもりだ。隣接していなくても効果があると期待している

「名古屋に開設する大型複合店」についてのニュースはこちら。まあ予想通り、ABCではなく流水書房だったね*1
ブックオフ、名古屋の大型複合店に流水書房を出店 - 新文化 - 出版業界紙

ノウハウの集積には数年を要するだろう。業績が好調なら、その後は複合店の出店が加速することになる。
これは他の新古書店にとっては脅威になり得る。


新古書店=ブックオフであるかのようなイメージが、なんかいわゆる「出版界」に浸透してしまっているが、実際にはそんなことはない。もしブックオフが倒産したとしたら、各社嬉々として空いた市場を埋め始める。
大株主となった出版社・DNP連合の当初の目論見とは違ってくるかもしれないが、いわばブックオフは防波堤としての役割も果たすことになる。いわゆる「出版界」が新古書店市場に影響を及ぼす一番大きな手段が「ブックオフ」となるからだ。せっかく手にしたコントロールの手段を、易々と手放すわけにはいかないだろう。
おそらく、これがブックオフにもプラスに働く。ブックオフに潰れてもらうわけにはいかない以上、従来のようにブックオフへの新刊供給を渋ってはいられなくなるからだ。前述したように、新刊と新古本の併売は同業他社と差別化を図るうえでこれ以上ない大きな武器となり得る。

さらに、うまいなぁと思うのだが、このインタビューで佐藤社長は一番厄介な問題を出版界の側へ投げ返している。
つまり、新古書店から著者への利益還元の具体的な方法はどうしたらよいか、という問題である。

どうやって還元するのか、その道に詳しい大株主にアイデアをいただきたいと考えている

覚えている方も少なくないだろうが、この問題、過去に同様にブックオフから投げられ、出版界は具体的な回答を出すことができなかったという過去がある。ブックオフが「とりあえず1億円くらい還元しようかと思うんだけど」と発言し、なんか知らん間に有耶無耶になってしまった、ということがあったのだ*2
おそらく、今回だってすんなりと回答は戻ってこないに違いない。この問題では出版社と著者は一枚岩ではないだろうし、ブックオフが取り組んでいると聞く単品管理も、まだ完全とは到底言い難い試験的な段階だ。どれだけの額を、どのような割合で分配するのか、試行錯誤が必要な、簡単には結論が出ない問題なのである。
その試行錯誤の間に、ブックオフは新刊・古書併売でも試行錯誤を重ねていくことになる。

当初、DNP・出版社によるブックオフの株式取得が報じられた時は、それは業務提携というイメージではなくもっと攻撃的なイメージでとらえられた。しかしここにきて、ブックオフはそれをプラスの目に変える方向を見つけたように思われるのだ。

*1:以前書いた関連エントリはこちらhttp://d.hatena.ne.jp/banraidou/20080731/1217598887

*2:そのことについて書いた関連エントリはこちらhttp://d.hatena.ne.jp/banraidou/20080410/1207799812