万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

新古書店と戦うには刃物や著作権法ではなく電子書籍式パワーボムが必要である

ブックオフの社長さんの露出が増えてるのかな。

ブックオフは“出会い場”、次に誘導します:日経ビジネスオンライン

 欲しいと思っている顧客がいる以上、当社をはじめ古書店に規制をかけることは、本当の意味での顧客第一主義ではない。議論すべきは、古書店と新刊を扱う書店の双方が、書籍市場の拡大を一緒になって考えていくことではないだろうか。

 ブックオフの成長を支えてきたのは20代前半男性の「漫画消費」だった。これを40代以上の層に対し、書籍の販売需要を増やす宣伝を続けたところ、2007年10月に30%だった40代以上の顧客が、2009年8月には34.7%にまで上昇している。

 当社は今後も継続して、ブックオフと新刊書店や中古雑貨店を併設した大型店舗を出店していく考えだ。

 名古屋の店舗はまだ実験店に過ぎないが、これで併設する新刊書店が収益をあげられないようであれば、これまでブックオフが受けてきた「新刊書店つぶし」の汚名を認めることになる。必ず成果を上げてみせる。

と、意気軒昂である。
個人的には、これからはコンテンツに関するより多くの業態を複合化した形の大型店が出てくる世の中になるんじゃないかなと思っているので、ブックオフのこの動き・意気込みには期待半分、不安半分である(いや、おもいっきり商売敵なもので)。
しかしまあ、人の考えというものはそんなに急速には変わっていかないもので、つい最近もこんな文章を読んだ。
「新古書店と闘うべき」/新潮社・佐藤社長が問題視|新文化 - 出版業界紙 - ニュースフラッシュ関連ページ

同社長はグーグルや国立国会図書館の書籍コンテンツのデジタル化については「もうインターネットのない時代には戻れないのだから、出版社としては工夫していかなくてはならない」と述べ、「しかし、新古書店は対応するものではなく、闘うべきものである」と語った。

なんつーか、古色蒼然と言うか。
しかしながら、ここで一つ考えてみたいのだ。新古書店と闘うということはどういうことなんだろうか。


今まで出版界が闘うために取ってきた方法を、極々大雑把に言うならば「お前らのせいで売上下がったんだ。万引きとかもあるし。法改正しちゃうぞ。寺銭よこせ」と主張し続けるというものだった。
この主張がどのような効果を上げたかというと、そういった考えの人がある程度増えたことくらいか。
本気で闘うというのなら、もうちょっと方法を考えてはどうか。この考えの欠点というのは、その主張の正当性に疑いを持つ人もまた多くいるということの他にも、そうやって苦労して新古書店から引っ剥がしたお客さんが出版界の顧客として戻ってくるという安易な想定にある。言い換えればこれはそういった想定の元に実験が行われようとしていますよ、ということなのだ。
槍玉に挙げられている当事者としてはたまったものではない。
まあ、たまったものではないってのは置いといて、闘うというのなら、そろそろ新古書店の顧客を(リアル・ネット問わず)新刊書店に直接持ってくる、ただ引っ剥がすだけでなく自分のところに持ってくる過程において引っ剥がす元がたまたま新古書店だった、みたいな方法を考えた方がいいのではないか、と思う。


実は、そういった方法を考えるにあたり、出版界が今まで新古書店に定着させようとしてきたネガティブなイメージが障害になるのではないかと思っている。
新古書店を批難している文章ででてくるのがまず「万引き」であり、その次に出てくるのが「発売して間もない新刊がもう並んでいる」という要素だ。
まあ、確かにお客さんに売ってもらった商品を並べているのであるから、そういったことも当然あるわけだけれど、そのイメージが強くなりすぎているのではないかと思う。もしかして、発売して間もない商品が新古書店の売り上げの基盤を成していると勘違いしていないだろうか。であるから、一定期間は買取しないようなルール作りみたいな、新古書店にとっては「まあ、それで出版界が満足するんなら別にいいんじゃないですかね」みたいな方策と言うのが出てきたりするのだ(ただ、これは自分の持っている本を売ることができなくなるお客さんにとってはマイナスではあるから、これはこれでもっとよーく考えなければならないと思う)。
このブログでは何度も繰り返してきたことではあるけれど、んなこたあない。
新古書店というのは、新刊書店ではなかなか触れる機会も減ってしまったが、従来の古書流通ではスポットライトが当たることも少ない、そういった本に対する需要を掘り起こしたものなのだ。そういった本が、売り上げの基盤を成すのである。いや、単純な話でね。新刊書店でもあまり見かけなくなったし、昔からの古本屋(しかも街中にしかないよね)でもなかなか見かけない本が安価で並べてあったら、そりゃ売れるでしょう。
で、あるから、そういった本を安価に提供することができれば、直接的な形で新古書店を利用するお客さんを新刊に引っ張ってくることができるだろう。
さて、ここから本題だ。
それを行うのに、電子書籍というのはまさにうってつけのメディアではないかと思うのである。
AmazonにAppleGoogleにと、電子書籍に関する動きが多く報じられる昨今、電子書籍市場がこれから先、もっと盛り上がっていくだろうなんていうのは、もう当たり前の話。
出版界が新古書店にお客さんを取られたと本気で思っているのなら、電子書籍の普及はそのお客さんを奪い返す格好の機会なんですよ?、と言っているのだ、私は。


ただ、この方法でいくと、どのようにして実店舗を抱える新刊書店にお客さんを誘導するか、といった点については手つかずのままになってしまう。
今までの経緯からいっても、特に出版界の上流から実店舗においしそうな桃が流れてくるとも思えないので、やはり店舗においては先に書いた「コンテンツに関するより多くの業態を複合化した形」のサービスを志向していくのが、生き残りのために必須なのではないかな、と思う。新刊と中古の併売のみにとどまらず、ね。本にまつわる様々なサービスが一か所に集まったビルなりSCなりでも面白いでしょうよ。さらにそこにオンデマンドの印刷機でもあった日には、もうたまらんだろうねぇ。



最後に、「今までの出版界からの批難にしても、新古書店を本当に潰す気などなくて寺銭が欲しかっただけでしょ」という考えもあると思うのだけど、このエントリはそれに対する皮肉でもあるので、まあ、ご容赦ください。