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万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

大美落語会に行ってきました

繁昌亭の昼席に行く予定だったのですよ。
前売り券も買っていたのですよ。
寝過ごしました。ええ、寝過ごしました。はい、それがなにか?
もう、このままふて寝してしまおうとも思ったのですが、なんか雨がちだった天気も回復しているし、悔しいし。夜に開かれる落語会をネットで検索したら「大美落語会」ってのがあるとのことで、笑福亭竹林さんが世話役だし、まだ高座を見たことがない桂文我さんが、これまたなかなか聞ける機会の少ない「土橋萬歳」をやるらしいし、というので急遽、お出かけしたわけであります。
これがもう大正解。
心の底から「ああ、今日は寝過ごしてよかった!」と……いや、会が終わった後、軽い興奮状態になるような良い会でした。


笑福亭呂竹「江戸荒物」
桂しん吉「鶴満寺」
桂団朝「一文笛」

中入り

座談会(竹林・文我・団朝)
笑福亭竹林「近日息子」
桂文我「土橋萬歳」


呂竹さん、しん吉さんの段階でいい感じに会場はあったまっていたと思うのです。事前にネタ出しはされていたので、私なんぞ「これだけ笑いの多い流れで来ていて人情噺の「一文笛」を聞くって、どんな感じになるんだろう?」と少し不安になったくらいで。
もうそんなもの、完全に杞憂でございまして。団朝さんの「一文笛」は実に素晴らしかったです。中入り後の座談会で世話役の竹林さんが「実は今日の目玉は「一文笛」なんです」というのを聞いて、やっぱりそうですよね。よかったですよねと嬉しくなったくらいで。
落語を積極的に聞くようになってから日が浅いのですが、「一文笛」は好きな噺でして……というか、ざこば師の高座を聞いてから「この噺いいなぁ」と思い、音源買ったり、生でも何回か聞いたりしているんです。
ざこば師の「一文笛」では、米朝師匠のオリジナルにはない一言がすごく印象的でして。スリの秀が、自分が良かれと思って犯したスリのために無垢な子どもが井戸に身を投げた顛末を兄貴から聞かされ、詰め寄られる場面。これでこの子が死んだら、親になんと言って申し開きをするんだという兄貴の言葉の後にさらにひとつ。
「これでこの子死んだら……何のために世の中に生まれてきてん!」
この言葉にドーンと胸を突かれる感じでして。この言葉があって、聞き手の私は、「ああ、これは単なる悪事に対する怒りではなく、もっと広い、世の中の『理不尽』に対するやりきれない、やり場のない怒りなんだなぁ、」とか思ってしまい、また切なくなってしまうのですが。
団朝さんの「一文笛」にはこの言葉や、それに類するような言葉はありませんでした。しかしながら、あの表情。
ストレートに淀みなく秀を詰問するのではないのですね。グッと一度詰まり、抑えようとした時に見せる苦しげな苦悶の表情。その表情が雄弁に苦しさ、やりきれなさ、悲しさを伝えてくるのですね。涙が滲んだですよ。うん。


中入後の座談会が、これまた盛り上がりまして。ブログには書かないほうがいいだろうなあという話も結構飛び出しまして(笑)。だから詳しくは書かないのですが。
竹林さん曰く、文我さんの会に数多く出してもらっている中で、楽しい落語会の作り方を学ぶことができた。だから文我さんは悲願のゲストであるとか。
また、自分がこの人のこの噺を聞きたい、という視点を大事にしていて、その意味で今日の目玉は団朝さんの「一文笛」であるとか。
えーと、その他には書かないほうがいいような話が色々と(笑)。


続いて竹林さん。座談会が盛り上がり時間が押しているため、手短にやるという前置き付きで「近日息子」なんですが、これがもう、大きく動きまくる大熱演ですよ!
前半はかなり省略されていたように思うのですが、長屋の連中が悔みを言いに行く前に巻き起こすひと悶着の楽しいこと楽しいこと!
額を汗で光らせながら、体全体で爆笑を引き起こしていまして。もう何度手を叩いたことやら。
トリの文我さんが枕で「病気になられる前の松鶴師匠に似てきましたなぁ」とおっしゃってましたが、これは、すごい褒め言葉なのだろうなぁ。手持ちのCDで小三治師匠が林家正雀さんをやはりそのように評していたことなども思い出したり。


トリが文我さんの「土橋萬歳」。聞くのは初めてです。呂竹さんも初っ端に「今日はなかなか聞けない噺が聞けるので私も楽しみにしているんです」と言っていたっけか。
座談会で、文我さんは大変な噺を実にサラリとやられるという話が出ていたんですが、ああ、それってこういうことなんだなぁ、と納得させられるような高座でした。
割と暗い心情が表に出てくる話だなと思うのですが、陰惨にならず、きちんと笑えて、きちんと楽しめる。
筋を追ってみると、逆切れして人を階段から突き落とす場面があったり、これで丸く収まるかと思いきや裏切りの場面があったり、刃傷沙汰の場面があったり、かなり暗い噺のはずなんですが、聞いた後に、ああ、いい物聞いたなぁと思えるって、すごいことなんですよね?


というわけで、もう大満足で帰宅し、なんとかこの興奮を吐き出したいとブログなんぞ書いているわけですが。
プログラムを見ると、次回は10月3日。出演予定は桂福丸、桂紅雀、笑福亭竹林、柳家三三、笑福亭仁智と、東京で評判の三三さんに、創作落語の実力派仁智さんという、またそそられる面子でございまして。
また行きたいので、公休、取れるといいなぁ。