万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

11月30日 第101回 雀三郎つるっぱし亭

雀三郎さんの高座を聞きに、初めて「雀のおやど」へ行ってきました。
鶴橋駅の構内から出ると、狭い路地に立ち並ぶ店、店、店。おおう、ディープだなぁ。
倉庫の二階につくられた「雀のおやど」は、そのせいか長細いお座敷。座布団が一面に並べられているのですが、横4列に縦10列という。


桂雀太……商売根問
桂雀三郎……軒づけ
林家染二……子別れ
桂雀三郎……小倉船


雀太さんの「商売根問」聞いたことがあったかなかったか記憶があやふやだったのですが、聞いた覚えのないくすぐりがあったので、おそらく初めて。いつ聞いても独特のテンポ、独特の雰囲気です。唐突に「ちゃいまんねん」から噺に入る導入も、存在感の強い右手の動きも、好き。
染二さんの「子別れ」はたしか以前繁昌亭のトリで聞いたことがあったように思うのだけれど、その時よりも最後、親子三人が対面する場面での無言の間がより強く印象に残りました。
線路に近い立地なので、電車が通るとその音が聞こえてきます。無言の場面の間にその音がちょうどうまいこと入り込んだ影響ももしかしたらあるのかしら。古典落語に電車の音は似あわないはずなのだけれど、まるでどこかの一室で実際にこのような対面がなされているような臨場感がありました。
でもやっぱり、雀三郎さんの高座は楽しい。
先日、これもやはり繁昌亭のトリで聞かせてもらった「三十石」があまりに楽しくて、その印象が強かったために今日も足を運んだのですが、やはり最強に楽しい。
「大爆笑」ではないんだけれども、場の空気がものすごくあったかい、ホームとアウェイでいうならばどこで聞いてもいつの間にやらホームにいる雰囲気になっているというか。いや、実際「雀のおやど」は雀三郎さんのホームグラウンドですけれど。
「軒づけ」での素人浄瑠璃、小倉船での、師匠ゆずりであろう帆が風をはらんだ様子を全身で表現する様子、芝居がかった見得、どれもこれも楽しくて仕方がないです。
同じような楽しさを、林家染丸さんの「掛取り」や「寝床」でも感じたのですが、染丸さんがどこか凛とした雰囲気も漂わせつつも楽しいのに対して、雀三郎さんはチャーミングに見える人が本当にチャーミングというか。
私みたいな初心者が軽々しく「名人」なんていう言葉を使うべきではないのですが、楽しい雰囲気を作り上げ、それを持続させダレさせない。きっと様々な名人像が世の中にはあるのでしょうが、これもまた「名人」像の一つなのだろうなぁ、などと。


次回の雀三郎つるっぱし亭は12月28日なのですが、「地獄八景亡者戯」をかけられるそうです。
あのしあわせ空間が1時間も連続で楽しめるってのは、すごいんだろうなぁ。行けるといいなぁ。

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