電子書籍には様々な夢がかつて詰まっていたが、その夢の中の一つに「絶版のない豊富なラインナップ」というものがあった。
紙の書籍では入手困難なタイトルでも電子書籍ならば手に入れることが出来る。そんな世の中になるのではないか、と。
それは夢とは違った少々後ろ向きな形で実現されるような気がしたけれど、そんなことはなかったぜ、というのがこの文章の言いたいことである。
1:各社、今までよりも積極的に電子書籍に参入し始める
2:人気のある作品(人気があるので紙の書籍でも手に入る)や、最近出た新刊を電子書籍でも展開
3:紙と電子、両方で展開したタイトルの中には、当然売上的に散々なものも出てくる
4:数年たち、紙の本の在庫がなくなり「品切れ重版未定」の商品がでてくる
5:復刊する気はさらさらないが、めんどくさいから電子書籍はわざわざ引き上げない
6:かくして、紙の本はとうに無くなったが電子書籍は残っているという、後ろ向きなロングテールとなる
7A:利用していた電子書籍サービスがそのサービスを終了する
8A:特に今までの利用者への救済策は講じられず、また、新たなサービスへ移行する出版社も、わざわざ売れなかったタイトルを移行する手間はかけないので「2」の段階に戻る
7B:今まで電子書籍で利用していたファイル形式が時代遅れの過去のものとなる
8B:ファイル形式の変換が必要となるが、サービス提供側が行うにしろ個人が行うにしろ、今や膨大となったラインナップを変換するのは手間がかかる。そのため、一部のタイトルのみが変換されるという事態が生じる
9:「絶版のない豊富なラインナップ」は夢に終わる
10:桶屋が儲かる