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万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

ケン・リュウ「紙の動物園」/分断と断絶/せめて慰めくらいは

話題作、ケン・リュウ「紙の動物園」をようやく読了した。素晴らしい出来。テーマが重い作品も多く、NHKの「映像の世紀」を見た時のようなシリアスな読後感。
おそらく、それは史実や戦争、紛争、社会問題を扱った作品が多いことにも起因しているだろう。そして収録作品の多くが「分断・断絶された/されていることの哀しさ」を描いている事にも。
表題作「紙の動物園」は親(の世代)との、そして移民と「アメリカ人」との断絶であろうし、「文字占い師」は自国民同士の断絶・分断だろう。殊に「世代間の断絶」というモチーフは短編集全体を通して何度も姿を見せる。
とはいえもちろんそればかりではない。ニヤリとするようなアイデアストーリーも収録されているし、ヒューゴー賞受賞作でもある「もののあはれ」は逆に「断絶しないこと」の重要性をテーマにしてるとも読める(「断絶」というテーマが共通しているので仲間とも言えるけれども)。
ともあれ私が素晴らしいと心打たれたのは、「救いはない。が、慰めはある」といった趣の話が多いところだ。
せめて慰めくらいは、というのが大衆娯楽たるジャンルフィクションの素晴らしいところだろう。
ちなみに、ここから慰めすらも取っ払ってしまうと、ティプトリーの作品群になる。