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万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

昭和元禄落語心中、第4話に登場する演目は上方ではどんな具合か、あくまで私の知る範囲で

昭和元禄落語心中」第4話、見ました。いやー、みよ吉さん、色っぽかったっすなー。芸事じゃなくて色気ばかりかと思いきや、小唄の稽古のシーンではしっかり聞かせてハッとさせる。他のシーンでは猫的な魅力をふりまいているだけに、小唄のシーンが明瞭に際立っているように思いました。

また、ドギマギする菊比古さんと海千山千のみよ吉さんの関係性が、直前に先代八雲師匠に稽古をつけてもらっていた「明烏」に登場するウブで堅い若旦那と吉原の女郎さんの関係性そのまんまで、全般的にアニメはストーリー進行のテンポが速いですが、そのおかげか、その対比が際立っているような。

また対比と言えばさ、前回、満州から帰ってきた助六さんを迎えた菊比古さんの第一声が「信さん、くさい(笑い泣き)」でしたね。んで、菊比古さんにしなだれかかろうとしてそのまま押し倒しちゃったみよ吉さんの台詞が「いい匂い」ですよ。三角関係を見事に暗示する素晴らしいセリフで。

また、その少し前のシーン、みよ吉にまた会おうといわれたことを菊比古さんが助六さんに告げるシーンも良かったですな。両者とも実にそっけない。幼馴染が「私さ……今日、告白されちゃったんだ……」「ああ、そうかい……」「それだけ?」的な! もうね! このシーンでごはん何杯も食べられるっていう方の気持ちもわかりますよ、これは!

細かいところでは、道路標識がアルファベットおよびマイル表記であるところで時代設定をさりげなく示したりしたところに感心しました。

そんで、小さな不満点も一つ。助六さんが夢金を演じているところで、ほんの少しですが一枚絵で演目中の光景(雪が降っている江戸の町)を見せたり、演じる助六さんの姿に降る雪を重ねたり凄みを見せるシーンでは下からライトアップするかのような効果を入れたりしてたんですが、あれはできればやってほしくなかった。そういったことを観客の「想像」に任せるのが落語の特徴であり魅力でもありますので、そこだけ少し残念。「そのように見せる」ではなくて「そのように見えてくる」であってほしいというか。

ともあれ、みよ吉さんのインパクトばっちりの回でありました。うんうん。



さて、第4話で登場したのは「そば清」「夢金」「明烏


菊比古さんだけにそばをとってやろうとしたつもりが楽屋にいた他の前座連中も「ごちそうさまです!」と言い出し困った師匠が名前だけ引き合いに出した演目「そば清」。上方ではそばではなく餅になって、タイトルも「蛇含草」と変わります。サゲのアイデアは共通ですが筋立てもかなり違い、東京でも「蛇含草」を高座にかける方もちらほらおられるようです。両方とも実に楽しい演目。

柳家さん喬 「そば清」

落語 桂米朝 蛇含草
上方でも頻繁に高座にかけられる「蛇含草」、多くの方が持ちネタにしてらっしゃいますが、個人的に強く印象に残っているのは桂文之助さんでしょうか。完璧なのにチャーミング。この方のCDやDVDが全く出ていないというのは七不思議の一つではないかと。「片棒」「短命」「らくだ」「たち切れ」その他、どれもこれもものすごいですよ。雀松から文之助を襲名されたときは、CDとか出るんじゃないかと期待したんだけどなぁ……
そういえば第4話の中で八雲師匠から菊比古さんが「お前には色気というか隙がない」ってなお小言いってましたけれど、文之助さんにも似たような有名なエピソードがあるのでご紹介をば。
みんな多かれ少なかれ、師匠をしくじる(失敗から師匠の機嫌を損ねる)そうなんですが、枝雀師匠に入門した文之助さん(当時雀松さん)、なんでも卒なくこなし、しくじることが全然なかったそうで。
それに業を煮やした枝雀師匠が大師匠の米朝師匠のところへ雀松さんを連れていき、「こいつ、全然しくじりませんねん!」
米朝師匠一言「……それでええやないか」


続いて助六さんが高座でかけていた「夢金」。これ、おそらく上方で今高座にかける人って、いないんじゃなかろうか。
ひょっとしたらいらっしゃるのかもしれませんが、まずお目にかかれない演目、であります。

三代目古今亭志ん朝 - 夢金
しかし、こういった「上方ではめったにお目にかかれない演目」がでてくるのも、落語心中の魅力だと思うわけで。いや、作り手側が本当に落語が好きじゃないと出てこないチョイスだと思うんですわ。1話の「鰍沢」もそうだけど。
あれですよ、極めてわかりにくい例えでいうと「好きなSF作家は?」という質問にクラークとかディックとかイーガンとか答えるんじゃなくて、グレッグ・ベアとかポール・アンダースンとか挙げるような、「一般への知名度は高くないけど確かにいい!」というチョイスというか。


3席目は菊比古さんが稽古をつけてもらっていた「明烏

落語 古今亭志ん朝 明烏
これもなかなか上方ではお目にかかれない演目ですが、こちらはこれまでの関連エントリでも何回もお名前を出しております桂文太さんが上方に移植してらっしゃいます。それ以外はちょっとわからない。