万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

東野圭吾氏の発言に見る安易な顧客像

Copy & Copyright Diaryさん経由、Sankei Web「【出版インサイド】本のレンタルにも「貸与権」導入 著作権使用料で交渉難航」。より、人気ミステリ作家である東野圭吾氏の発言を取り上げようと思う。

記事を引用すると

 作家の東野圭吾さんは「利益侵害だけを理由に、著作権を主張しているわけではない」と、強調する。「作家、出版社は、書店で定価で買ってくれる読者によって報酬を得、次の本作りができる。書店で買う人、新古書店で安く買う人、レンタル店で安く借りる人、図書館で無料で読む人が、同じ読書サービスを受けるのはアンフェア。より早く新刊を読めるなど、書店で買うお客さんを優先したい」

ってな感じなのだけれど、Copy & Copyright Diaryの末廣さんは「本の価値を決めるのは作者ではなくて読者である」と憤慨している。これには全く同意。
同意した上で、もうひとつ気になった点を書いてみようと思う。それは、東野氏がどのような顧客像を思い描いているか、だ。
作家にしてみれば(狭い視野で見ると)新刊書店で本を買ってもらえないことにはおまんまの食い上げであり、新刊書店で本を買ってくれるお客さんを大事にしたいというのは至極もっともなことに思える。そこまではいいんじゃなかろうか。
問題は、新刊書店で本を買わずに他のサービスを利用して読書する行為を指して「アンフェア」と言っていることなんだな。
「私は新刊書店しか利用しない。新古書店も図書館も漫画喫茶もレンタルも利用せずに読書を楽しんでいる」という人もいるだろう。そういう顧客にとっては、この東野氏の発言は痛くも痒くもない。
しかし、だ。では、新刊書店は一切利用しないで読書を楽しんでいる、という顧客はいったいどのくらいいるのだろうか?
もちろん、データなど無い。これから書くことは私個人の憶測に過ぎない。だが、多くの(もちろん「すべての」ではない)顧客は新古書店・図書館・漫画喫茶・ブックレンタルといったサービスと新刊書店というサービスを併用していると考えるのは、極々自然なことではないだろうか?
少なくとも、そう考えなければ新古書店の隆盛などは本来ありえない事態なのである。新刊書店を利用するお客さんからの本の入荷無しに、新古書店は成立し得ない(そして新古書店を利用するかどうかは、個々のお客さんにゆだねられるのだ。それは新古書店が決められることでも、新刊書店が決められることでも、ましてや作家や出版社が決められることでもありえない)。
東野氏の発言は、新刊書店を訪れた顧客を厚遇し、新古書店や図書館といった施設を利用した顧客をアンフェアだと非難するものだ。
東野氏は、「ひょっとしたら両者は同一人物かもしれない」とは考えなかったのだろうか?
他のサービスを利用した顧客を非難する。そんな方法で顧客の心をつかめるのだろうか?そんな方法で顧客サービスを向上させることが出来るのだろうか?
これもデータは無く、私の独断に過ぎないが、答えははっきりとNOであるように思える。
考えてもみて欲しい。他の店に行ったと聞くや目の前で舌打ちしてみせる。そんな店主のいる店に行きたいかい?