読了。途中までは軽めの楽しい本だと思っていたけど、いやはや、途中から印象は一変。こいつぁ結構挑発的な本かもしれない。
聞きたまえ諸君。ラマルクが復活したぞ。
なんか、獲得形質って遺伝することもあるらしいぜ。
第4章までは実際、軽い感じで楽しめる本なのだ。遺伝が関係する病気が世の中にはたくさんあるけれど、「では、病気を引き起こす遺伝子がなぜ自然淘汰に引っかからなかったのか?」という、なんつーか、トリビア的なトピックなんだよ。
それが5章以降、この御仁は本性を現す。
レトロウイルス、トランスポゾン、エピジェネティクス(後成遺伝学)といった武器を駆使して、どんどんとダーウィニズムに攻撃を加えていくのだ。その姿はまるでラマルキズムの権化である*1。トランスポゾンと断続平行進化を結びつけるところや、遺伝子とは冗長性の高い情報ネットワークシステムであると定義して(言及はしていないが)利己的遺伝子論に冷や水を浴びせてみたり、進化が完全なる偶然に依存しているという考えに反論してみたり*2なんてあたりがまさに真骨頂。
と、ここまで聞いて「なんだ、トンデモかよ」と思ったあなた。いやいや、とんでもない。比較的最近の知見を積み上げて構成された論は、軽そうに見えてべらぼうに手ごわいぞ。神様に頼りもしなければオレ理論でもない。積み上げられた知見を元に、新たな進化観を提示してみせているんだから、これはサイエンス以外の何者でもない。
ドーキンスは動物行動学出身だった。グールドは古生物学出身だった。
このシャロン・モレアムは医師。アルツハイマーの遺伝的関係の研究で注目されているそうで。
言い方を変えよう。この御仁、遺伝の専門家なのだよ。
進化論に関心のある人は是非読んで欲しい。強烈な挑戦状だぜ、これは。