万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

本屋のいくつかの未来についてのつまらないエントリ

本屋ってどうなっていくのだろう?

再販制度がそのまま維持されて、ダイエットしていく

つまり、今と何も変わらないとしたら、今の傾向がそのまま続いていくわけで、いい感じに本屋の店舗数が減り、出版社の数も減る。
そして新刊書の市場がある程度小さくなったところで、落ち着くんだろう。
注意しなければいけないのは、ゲームやDVDやCD(まあ、それぞれどの業界も厳しいんだとは思うが)と比較して、新刊書というのは扱っている業態が極端に限られているということ。ええと、ぶっちゃけて言うとね、ゲームやCDやDVDは電気屋さんでも扱うことが多いし、TSUTAYAやGEOでも扱うことが多い。新刊書は? まあ、新刊書店くらいだわな。あとはコンビニに一部の雑誌と一部のコミックが入荷するくらい。
これは勘にすぎないけど、まあ、地方ではいくつかの市町村をひとまとまりとして、その中に1〜2店舗、郊外型の中型店舗が残る、程度で落ち着くんではないかな。その小さな地域の中核となる市の郊外に本屋が残って、周囲の町(もしくは合併された元「町」)には本屋は残らない、と。
都市部は知らん。まあ、大型店が出来てはつぶれ、出来ては潰れしていくうちに、気がついたら以前より1〜2店舗少なくなってましたってなとこじゃないの? レコードショップみたく。

後追いの「流通センター」と対取次戦争

他の小売店では、会社が自前で流通システムを整備していたりする。コンビニのトラックとかよく見かけるでしょ? あれ。まあ、チェーンストアには必須ですわな、本来なら。
大雑把に言うと、バイヤーが買い付けた商品はそれぞれの店舗へ発送されるのではなく、流通センターへ一括で、どかっと納入される(で、「その分安上がりでしょ?」と値下げ交渉をしたりする」)。そしてその山のような商品をディストリビューターが各店舗へ振り分けていく。商品によってはセンターに補充分をストックしておき、店舗はセンターへ補充の依頼を上げる。
さて、ここまで読んで「ん? これって取次がやっている仕事と同じじゃない?」と思ったあなた。まったくそのとおり。
他の小売業態においても、この役割は従来は問屋さんが担っていた。企業が大きくなるにつれて、効率化のためその役割を自分たちでやるようになった、と考えて差し支えない。
だいたい、立派な流通センターをきちんと構築しているところでも、すべての商品がメーカーから直接納入されるわけではない。完全に問屋さんが淘汰されているわけでもないのでね(しかし、心の奥底でメーカーからの直納を願ってはいるのだよ)。
しかし、CCCとワンダーコーポレーションが包括的な業務提携を行うなんていう流れも出てきている(こちらこちらをどうぞ)。

私の見た範囲(狭いもんですが)では、「なんでえなんでえ、これで日販の一人勝ちかよ?」的な反応が多かったのだけれど、えーとね、私、関東には在住経験がないのに、なーんかこの「ワンダーコーポレーション」という企業名に聞き覚えがあった。なんでだろ、と思っていたら、なんのこたぁない。以前にこのブログで取り上げたことがあったんだな。
チェーンストア - 万来堂日記2nd
つまり、ワンダーコーポレーションというのは(おそらく家電を扱っていたノウハウを生かして)新刊流通に「自前の流通システム」を導入しようとした企業であったわけで。そんな企業とTSUTAYAでおなじみCCCが手を組んだ、と。
今のところ、ゲーム・CD・DVDの流通に関するメリットが強調された形ではあるけれど、CCCがワンダーコーポレーションの新刊書流通のノウハウをまるっきり無視するとも思わないわけで。
少々怖い言い方をすると、「新刊書は後回しにされた」のだと思う。まあ、無理もない。てっとり早く利益を上げようと思ったら、私だって新刊書なんかじゃなくてそれ以外のメディアの流通にまず力を入れると思う。
しかしだ、良くも悪くもドミナント展開で定評のあるCCCが、新刊書で自前の流通システムを構築することを視野に入れていないとは、どうも考えられないのだよね。ぶっちゃけ、効率的な流通システムの構築とドミナント展開はセットみたいなものだ。
さらに言うと、ロードサイド型のチェーン店というのは、新刊書店においてはあまり注目されていない。さーてみんな、書店のニュースでググってみろ。やれブックファーストやら、ジュンク堂やら、紀伊国屋やら、ABCやら。わはは。コンテンツ商売以外の小売りではロードサイド型が天下を握って久しいってのにな。
ロードサイド型のチェーンストアと自前の流通システムってのが、また相性がよろしいわけだ。
CCCが流通システムの構築に力を入れ始めたら、その流れに追随する企業が必ず現れるだろう。
出版社が「これだけの部数、ウチでさばききるから一括で納入してくれませんか? もちろん買い切り条件です」といわれたら、これって、それなりに魅力的だろう?


さて、そうすると日販の立場は?
いや、日販に限らず、取次の立場は?
そもそもが問屋という段階をガスッとすっとばしてしまおうというのが、自前の流通システムの大きなメリットなわけだ。
選択肢は二つある。
・取次もその流通システム構築に積極的に関与していくことで、自分たちの位置を確保していく。おそらく、これが一番平穏無事に済むやり方なのだが、基本的に新刊書の流通は硬直的なままずっときているので、こちらの可能性は高いとは言えない。となると…

・取次と本屋の全面戦争

さーて、たとえばの話だけれど、CCCやGEOやらを敵に回して、それを寄り切るだけの体力、今の出版業界には残っているのか?
さらに言おう。日販やトーハンが突っぱねていても、脇から油揚げをさらう取次が現れないという保証なんてないんだぜ?
と、いう感じで。取次の相対的な力が弱まっていくのではないかと思う。
さらに夢想を広げるとだね……

書店の「自社ブランド」が出現する日?

ある程度規模が大きくなった企業は、自分たちで商品を開発して(もしくは開発を他の企業に依頼して)作った商品を販売することがある。えーと、わかりやすい例で言うと、ジャスコに行ったことのある人、トップバリューというマークの入った、他の商品よりちょっと安めの商品を買ったことはない? ローソンに行ったことのある人、ローソンのマークの入った、ちょっと割安のウーロン茶とか買ったことはない?
あれがそうです。
何で安いかというと、もちろん開発段階でコストを抑える努力をしていることは間違いないのだけれど、流通の各段階にかかるコストを省略していることも大きいわけで。
さーて、書店が「ウチの店にしか並べていません!」という自社ブランドを並べ始める日だって、ないとは言えない。
……誰か今、「ダイソーの100円本」とかつぶやかなかったか? 気のせいか。そうか。
しかし、あれもそういったものの一つ。
本に限らず著作物というのは、代替品のないワンアンドオンリーの商材であるということがよく言われる。まあ確かにそれも真理ではある。しかし、視野を少し大きくとると必ずしもそうでもない。えーと、例えばだけどさ、宮部みゆきの本は宮部みゆき以外には書けないけれど、「良質のミステリを書く作家」となると、その数はぐっと多くなる。
まあもっと無難な例で言うと、地図とか、コンピューター関連の本とか、参考書とか。そういった実用書になると、もうワンアンドオンリーとは言い難いでしょ? 少なくとも売る側はワンアンドオンリーだとは思っていない。
さらに言うと、出版社がもう始めている分野もある。いや、コンビニとかでよく見かける廉価版のコミックなんて、まさにそう。
「全国にあまねく、同じ商品が流通する」モデルが破棄され、ウチの店にしか並んでいない商品で差別化を図る。そんな未来がくるかもしれないよ?

新刊書がパンダになる

さーて、何度かウチのブログでも触れたことがあるけれど、新刊書と古本の併売という動きがある。平安堂や田村書店なんかが有名なのかな? 今までは新刊書店からのアプローチが多かったが、最近ようやくブックオフブックオフオンラインで併売までこぎつけた(余談だが、新古書店勤務が長かった私的には「なんで新刊書店ばっかり併売するの? なんで新古書店には入れてくんないの? そのほうがよっぽどフェアじゃねーじゃん」という忸怩たる思いがある。正直なところ)。
さーて、新品と中古の併売なんて、本以外では珍しくもなんともない。
で、ぶっちゃけた話、新品のコンテンツに利益なんざ、はなっから期待していない。
あれはな、集客のためにやってんだ。集客のために。


なぜに新刊書店側からの古書併売が注目されるかというと、それが利益確保の手段として導入されているからだ。別に顧客重視じゃないんだよ(中にはそういった理念を掲げているとこもあるだろうけどね)。このままじゃやってけないから、利益をとろうっていう。
ということは、新刊書である程度の額の利益がとれる大きな企業よりも、利益的に苦しい小さな企業の方が、この流れには近い位置にある。
この流れが進んで行った場合、中小の企業にとって、新刊書が集客のための存在、ちょっと古い言い方だが客寄せパンダになる可能性が非常に大きい。というか、ほぼ不可避。
回避するためには、きちんと利益の取れる商品を出版社側が用意する必要があるのだけれど、まあ、そんなことは無理でしょう。
つーわけで、より集客の見込める新目の商品に対する依存が大きくなる一方で、カタログ的な品ぞろえ、定番とか常備っつうのか? そっちのほうは古本が担当するってな話になる。出版社涙目? 知ったことか。当事者にしてみりゃ生き残るのが先決だよ。





ちょっと話はそれるのだけれど、新刊と古書の併売という話になると「古書を新刊と偽って返品する」というのが、懸念される点としてよく言われる。こないだ、ウチの店にもブックオフの値札が張られた文庫が納入されてきたわ(笑)。
えーとね、ぶっちゃけ、それって企業対企業の信用問題じゃない?
前述したとおり、CD・DVD・ゲームは新品も中古も併売しているわけだけどさ。もし本以外のそれらでそんなことしたら、ちょっと考えるだけで恐ろしいんだけれど。
今まで出版社や取次は、そういった詐欺行為に対してきっちりペナルティーは科してきたのかしら? ぜひご存知の方に聞いてみたい。




さーて、色々と勝手に空想してみた。当たったら嬉しいものもあれば、嬉しくないものもある。
この先、どうなっていくんだろうねぇ……