初めてTORII寄席に行きました。今回は特別企画らしく、演者5人が3つのネタを出し、どのネタをやるか当日決定するという趣向。
開演すると、高座にまん我さん、団朝さん、春雨さん、米紫さんが座り、米團治さんは高座の横に置かれたホワイトボードのところで進行役。観客からの拍手の量で、どのネタをやるか決定するとのこと。
各人が3つ挙げたネタは以下の通りです。
桂まん我さん
「餅屋問答」
「野ざらし」
「二番煎じ」
団朝さん
「一文笛」
「帯久」
「小咄六連発」
桂米團治さん
「不動坊」
「茶漬間男」
「蔵丁稚」
桂春雨さん
「初音の鼓」
「浮かれの屑より」
「首屋」
拍手による投票の結果、演目と出演順は以下のようになりました。
桂まん我……野ざらし
桂米紫……厩火事
桂団朝……帯久
中入
桂米團治……茶漬間男
桂春雨……浮かれの屑より
「茶漬間男」ではトリはとれないですよねー(笑)。
まくらをたっぷりとった「茶漬間男」や、米紫さん動きまくりの「厩火事」も楽しかったのだけれど、一番印象に残ったのは団朝さんの「帯久」。以前、大美落語会で聞かせていただいた「一文笛」がとてもよかった記憶があり、演目が「帯久」に決まった時には心の中で拍手喝采でした。いや、実際にも手は叩いていたけど。
時間の関係か、後半、お白州の場面はもっとじっくり聞きたかったかなと、ちょっと思ってしまったのですが、前半から中盤の和泉屋与兵衛と帯屋久七の対比が見事というか。落ちぶれても品を失わない和泉屋与兵衛と、店が繁昌しすっかり品を失ってしまった帯屋久七の姿、思わず身を乗り出して聞き入ってしまいました。
「帯久」は米朝師匠のものと立川志の輔さんのものと桂文團治師匠の録音を聞いたことがあったのですが、「帯屋久七が和泉屋与兵衛を侮辱し傷つけている」ことを一番強く意識させられたのはこの日の団朝さんの高座かもしれません。その傷つけられた感覚が生々しく残っているうちに和泉屋与兵衛が「なぜ火事はあの時、自分を巻き込んでくれなかったのか」なんて呟くものだから、涙腺にグッときましたですよ。