万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

昭和元禄落語心中、第5話に登場する演目は上方ではどんな具合か、あくまで私の知る範囲で あと芝居噺とか

昭和元禄落語心中」第5話、見ました。
三角関係、進行中ですねぇ。菊さんとみよ吉さんのキスシーンも出てきて。しかしあれだな、めんどくせえ男だな、菊さんってのは(笑)。
やはり今回最大の見ものは鹿芝居のシーン。見事に化けた菊さんの艶姿も見ものですし、落語ではないけれど菊さんが初めて自分の芸に自信を持つ、重要なシーンですね。5話序盤で、助六さんの女性の演じ方にダメ出しをしているシーンが示唆的というか。女性の演じ方等、細かな心情の演じ分けに適性があることをそれとなく示唆しているシーンなわけで、それが両方の性別をまたにかけるような役を演じる事で自覚的になったというか。素直に行けばこの後、菊さんは快進撃するわけなんですけれど、さて、どうなりますか。


5話に登場した演目は、助六さんが菊さんの前で披露した「品川心中」のみです。

十代目金原亭馬生・品川心中
「品川心中」は江戸落語移植のスペシャリスト、桂文太さんが「松島心中」の演題で上方に移植し、高座にかけてらっしゃいます。
今回は登場した演目が1つだけだったのでこれにて終了。はい、解散解散……







というのもつまんないので、上方落語でよく見かける芝居噺のことなどをつらつらと。
やはり今回の最大の見どころは噺家の芝居「鹿芝居」。芝居(歌舞伎)を扱った演目を「芝居噺」などと言うそうで。狭義の芝居噺は書き割り使ったりなんたらかんたらで結構手がかかるものだそうなのですが、こちらの方は上方ではとんと見かけません。昔はあったのでしょうが、東京でもなかなかお目にかかれないものになっているようで。
広義の芝居噺となりますと「話の中に歌舞伎を取り入れたもの」となります。
上方落語の特徴としまして、演じている最中にお囃子を賑やかに導入するってのがありまして、そういった意味では芝居噺は上方落語が得意とするところかもしれません。
例えば芝居好きの若旦那が丁稚を巻き込んで大騒動を巻き起こす「七段目」

桂米團治 「七段目」
芝居好きの丁稚さんがお仕置にと閉じ込められた蔵の中で忠臣蔵を演じて見せる「蔵丁稚」

桂米朝 「蔵丁稚」
質草を蔵へ取りに来たはずの質屋の丁稚さんが仕事を忘れて芝居の真似ごとに没頭する「質屋芝居」

桂春之輔 質屋芝居
丁稚どころか一家総出で、暮らしの中で芝居を引用しまくる「蛸芝居」

桂吉朝  「蛸芝居」

これらはいずれも、登場人物が芝居好きで、日常生活でも芝居の真似をしちゃう、という筋立てですが、それ以外にもあります。
例えば、ストーリーの中に芝居が登場するのではなく、歌舞伎の演目を再現すること自体に眼目を置いた変わった演目「本能寺」(でもこれが楽しいんだ!)

米朝 本能寺
アクションシーンが歌舞伎のパロディとなっている「竜宮界龍の都(小倉船」)」

桂米朝 「小倉船」竜宮界龍都
他にも、故桂吉朝さんが復活させたレアな演目「そってん芝居」、文太さんの珍品「大江山酒呑童子 鬼切丸の由来」、歌舞伎の世界自体を舞台とした大ネタ「中村仲蔵」「淀五郎」(それぞれ露の新治さんと桂雀三郎さんの得意技です)、創作では、小佐田定雄作で吉朝さんが演じた「狐芝居」や、笑福亭たまさんによるギャグ満載の「猿之助歌舞伎」などなど。
歌舞伎に詳しかったらきっと倍楽しめるんでしょうが、私は文楽は見たことあるけれど歌舞伎はさっぱりでして*1、それでもカッコ良さを感じたり、様子が滑稽だったり、芝居の真似をしている人物たちが実に楽しそうだったり、演目によってまた演者さんによって色々と楽しみ方があって。
今、精力的に活動されていて芝居噺を得意にしてらっしゃるイメージがある方というと、露の新治さん、桂九雀さん、桂米左さん、桂よね吉さんといったところがパッと思い浮かびますですね。それ以外にも、多くの方が高座にかける、なくてはならない分野です。

*1:だってお高いんだもん