万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

「クレヨンしんちゃん爆睡!ユメミーワールド大突撃」を3回観てきたので、かなりテンション高めに感想書くよ!

映画クレヨンしんちゃん爆睡! ユメミーワールド大突撃、計3回観てきました。
私の中では不動の傑作の地位を確かにしましたですね。私の乏しい映画やアニメの観賞経験の中ではありますが、子供に向けたメッセージが込められた作品としては、その力強さにおいて最高峰ではないかと思います。



本作、ギャグが結構面白いです。私が最も好きなのは、ひろしとみさえが「なぜ大人がこれほど、子供のように夢見る力を持っているんだ?」的な問いに対して答える、その答えのあまりの馬鹿馬鹿しさ!!
三度見て、三度とも笑ってしまいましたよ! あれはねーよ!!
あと大和田獏さんの出演シーンですが、檀ふみさんも出てればもっと良かったと思います!*1



あとね、実に丁寧に伏線とか貼られていたり。
本作、みさえが大活躍するんですが、初見時には感動しつつも「ちょっと唐突じゃねーの?」とも思ったんです。でもね、見直してみると今回では、夫婦の行動で常にみさえがイニシアチブをとってるんですね。
また今作のヒロインのサキちゃん。実につっけんどんでみんなの第一印象最悪、些細なことで怒りをぶちまけて周囲との断絶を招いたりするんですけれど、ではなぜサキちゃんが怒ったのか。その理由というのが、我々からは最初は些細などうでもいいことに思えるのだけれど、実は今作の実に重要なキーポイントになっているというね。


あとすごくいいのがサキちゃんと父親との朝食シーンですね。もう、素晴らしいです。
2人きりの食卓。サキちゃんの前には焦げ焦げのトーストと黄身がつぶれちゃった目玉焼き、缶のトマトジュースに、あろうことかポテトチップス。うわぁ……なんというかこの、ぬくもりの欠落感。ひどいよ! ひどいよ!!
でもね、その直前の調理シーンではインスタント食品が山のように積み上げられているんですよ。
んで、サキちゃんの前にはまがりなりにも手料理が並べられているけれども、父親の前には何も置かれていない。きっとこの後インスタントで済ませるんでしょう。つまり、色々欠落感を感じさせられてしまうような献立ではあるけれども、それでもこの父親は娘のために、娘の為だけに食事を用意しているんですよ。
そして「おいしいか?」と尋ねる父親。「おいしいよ?」と答える幼い娘。
もうね、胸を締め付けられるような名シーンですね……しかもこれ、割と序盤ででてくるんだぜ……



さて、私、ライムスターが大好きでして。だもんで宇多丸師匠の映画評なんかもちょくちょく楽しんでおり、それに影響を受けて観る映画決めたりしておりまして、本作を観たのも宇多丸師匠が高橋監督の前作「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」を誉めていて、んでもって見たら見事に泣いてしまったから、なんでございます。*2
その宇多丸師匠、映画評の中で度々自分たちライムスターのリリックを引用したりすることがあるんですが、最新アルバム「Bitter,Sweet & Beautiful」収録の、コンセプト上で中核をなす「Beautiful」のリリックを引用しますと

子供の頃 テレビで観た 悪に立ち向かう無敵のヒーロー
赤 青 黄色 憧れたのは何色のヒーロー?
平和な町に 訪れた危機は CM挟んで
25分後には取り除かれた 強くなった気になれた
それをファンタジーと切り捨てた10年後
そこに 大人が込めたメッセージに気づいたその10年後
で、その10年後 あの日の僕らを前に 今、僕らは何を言う?
世界を映しだすその小窓の向こうに 今、君らは何を観る?

この映画は、まさにこれなんじゃないかと思いますです。
今作、構図としては「みんなでお姫様を助けに行く」という、王道も王道の設定となっています。
夢の世界がテーマですので、徹頭徹尾、精神世界がテーマ、言い換えると精神世界において「助け」「救い」とは何か、みたいな話にもなるわけです。

さて、「夢」には色んな意味があります。夜に見る夢。奔放な想像力としての夢。将来になりたい姿としての夢。
今作は夜に観る夢というのを入り口にしてはいますけれど、奔放な想像力への、そして将来の夢への賛歌、でもあります。
特にそれを象徴するのが、ある人物が「悪夢」に押しつぶされそうに、そしてそのシーンは見方を変えると現実に押しつぶされそうになったとき、そして自ら「夢」を象徴するものを折ってしまいそうになったときにあるものが不思議な光を放って……夢にくじけそうになった時に自分を救ってくれたのもまた、夢そのものだったというね……もうね、たまんないっすね、あのシーンは。


そんなわけで、今作は夢へのアンセムでもあります。
でもね、そんな、将来の夢をはっきりと描いてピカピカしているようなそんな人間ばかりじゃない。むしろそんな人間少数派だと思うんですよ。じゃああれか、特に夢を見ていない俺らは負け犬ってことでええんか、と。
いや、違うんです。これがおそらく最も大切なところだと思うんだけれど。
実は今作に込められているメッセージ性としては、夢の肯定というのは副次的なもので。
もっとも強く打ち出されているメッセージは「君は君のことを好きになっていいんだ!」というものなんです。
だから、もし君が「そんなこと言っても、俺は将来の夢とか特にないし……」とか思っていても、君はそんな君を好きになっていいんだ!!


今作は「みんなでお姫様を助けに行く」話だと書きました。
「みんなで」なんです。主人公はしんちゃんですが、それだけじゃない。
カスカベ防衛隊も、今回大活躍のネネちゃん筆頭に大活躍しますし、野原一家も大活躍する。いわば、友人や周りの大人やみんなが寄ってたかって一人の少女を救うために奮闘します。
その末にたどり着いた結論が「君は君を好きになっていいんだ」、言い換えると「まわりのみんなも、君が君を好きになることを望んでいるんだ」なんですよ!


正直、このメッセージは子供には伝わりきらないかもしれない。
でもライムスがラップしたように、10年後の10年後、届くかもしれない。
今の子供たちの10年後、そしてそのまた10年後に伝えるにはこれ以上強いメッセージはないんじゃないかというくらい、力強いと思うんです。

というわけで、劇場で観て、DVD買って、10年後に観て、そのまた10年後に観る事をお勧めします。

*1:NHKでやってた「連想ゲーム」、大和田さんといえば檀さんですよ!

*2:それなのに4月30日現在、ムービーウォッチマンでは1回リスナーカプセルに入ったきりで、今週分ではガチャに入ってすらいないんだぜ? 宇多丸師匠、もったいないよ!