この二日間で有川浩「阪急電車」と「図書館革命」と「別冊 図書館戦争1」を読了した。
[asin:4048670298:detail]おかげで頭の中がすっかりベタ甘で、特に別冊を読んでいる間は顔がニヤけっぱなしだったと思うのだが、まあ、それはさておき。
「阪急電車」を読んでいて感じたのだけれど、有川浩は「誇りある人々」を書くことを意識しているのではないか、と。
まさに「阪急電車」がそういう話、阪急にたまたま乗り合わせた乗客たちが、ささやかではあるが誇りをもって行動を起こし、それがフーガのように少しづつつながっていく話であったりする。
そういった目で「図書館戦争」にはじまるシリーズを見直してみるのも面白いかもしれない。
シリーズ本編を読み終えて満足しつつも少しだけ不満に思えた点があって、それはなにかというとね、それは敵役であるメディア良化委員会の薄っぺらさ。言い換えると、魅力的な悪役の不在であったわけなんだわ。
しかし、それは作者がメディア良化委員会の側に、その行動の指針となるべき「誇り」を一切見出していないのではないかと想像すると、理解しやすい。
対して、図書館側がその心中に抱いている「誇り」はこれでもかというくらい書かれている。というか、それが読みどころのひとつである。
ええと、つまりだ。「阪急電車」と「図書館戦争」シリーズでは「敵=誇りを持ってないやつ」という構図が共通しているのだな。
どちらも十分に面白かったし、十二分に楽しんだけれど、そうなるとね、次は「誇りと誇りのぶつかり合い」というのを読んでみたくなる。いや、読者というのは贅沢な物で。
IFの話はあまりよろしくないんだけどさ。例えばさ、もし良化委員会側に「報道被害に追い詰められて身内が自殺してしまった」みたいな人物がいたらとか想像すると、わくわくしてこない?
いつかは、有川浩のそんな作品が読んでみたいな、と。