ドウデュース
5歳 牡
武豊(たけゆたか)
父ハーツクライ
母ダストアンドダイヤモンズ
16戦8勝
主な勝ち鞍
21年 朝日杯FS
22年 日本ダービー
23年 有馬記念
24年 天皇賞・秋
24年 ジャパンカップ
22年ダービー。1着ドウデュース、2着イクイノックス。
ダービー後、雌伏の時を過ごす間に、ライバルは世界最強へと駆け上がっていった。
雌雄を決するはずだった23年秋。パートナー武豊負傷のアクシデント。鞍上乗り替わりへ。
ライバルが天皇賞・秋、ジャパンカップと有終の美を飾る一方で、それぞれ7着、4着に終わる。
武豊が復帰した、ライバル不在の有馬記念。復活の勝利。
そして、24年秋。過去最高の状態で、すべてを撫できる末脚。秋天とJCを制し、史上三頭目の秋古馬三冠に王手をかけた。
あとひとつでG1を6勝。アイツに並ぶ。
ここを勝てば栄誉ある秋古馬三冠。アイツを超える。
世代の代表は誰か、はっきりさせようじゃないか。
ダノンベルーガ
5歳 牡
松山弘平(まつやまこうへい)
父ハーツクライ
母コーステッド
13戦2勝
主な勝ち鞍
22年 共同通信杯(G3)
1番人気で迎えた第89回日本ダービー。
1着ドウデュース、2着イクイノックス、3着は後に菊花賞を制するアスクビクターモア。ダノンベルーガは4着に終わった。
以来、G1で2着1回、3着2回。あと一歩が届かない。しかし。
23年ドバイターフ2着。世界に通用する実力は示した。
24年ドバイターフ3着。まだまだ衰えてなどいない。
忘れている者たちに思い出させろ
本当のライバルは、誰なのか。
アーバンシック
3歳 牡
C・ルメール
父スワーヴリチャード
母エッジースタイル
7戦4勝
主な勝ち鞍
24年 菊花賞
24年 セントライト記念(G2)
1番人気ドウデュースの父はハーツクライ。アーバンシックはハーツクライの孫にあたる。
ハーツクライといえば伝説の2005年有馬記念。無敗の王者ディープインパクトに、鞍上のルメールは狙いすました先行策。
ディープインパクトに、国内で唯一土をつけた競走馬となった。
「今年も勝つ自信があります」と、ルメールはインタビューで語る。
息子の偉業に、父を最もよく知る男が立ちはだかる。
ダノンデサイル
3歳 牡
横山典弘(よこやまのりひろ)
父エピファネイア
母トップデサイル
6戦3勝
主な勝ち鞍
24年 日本ダービー
24年 京成杯(G3)
一生一度の晴れ舞台、クラシック三冠初戦、皐月賞。
鞍上の横山典弘は、愛馬のほんのわずかな異常を感じ取った。
大きな決断をし、スタート直前で自ら出走除外。ダノンデサイルは、戦わずして敗れることになる。
翌月日本ダービー。
府中の長い直線。二冠を狙う皐月賞馬ジャスティンミラノが馬場の中央から抜け出しを図る。
インコースから伸びる馬がいた。ダノンデサイルだ。前走の大きな決断が、実った瞬間だった。
鞍上は希代のトリックスター、横山典弘。時に大逃げ、時に後方一気。その馬がしたいと思う競馬をさせる。何をしでかすかわからない。
「おもしろいもの、見せてやるよ」
その言葉通りの有馬となるか、否か。
スターズオンアース
5歳 牝
川田将雅(かわだゆうが)
父ドゥラメンテ
母サザンスターズ
14戦3勝
主な勝ち鞍
22年 桜花賞
22年 オークス
2冠牝馬、スターズオンアース。G1を2勝。他、大阪杯と有馬記念で2着。秋華賞、ヴィクトリアマイル、ジャパンカップで3着。一度も4着以下がない抜群の安定感を示してきた彼女。
ところが、今年に入って精彩を欠く。今年はわずか2戦。それぞれ、8着と7着に沈んだ。
ファンも薄々気づいている。これがラストランなんじゃないだろうか。
ファンも頭ではわかっている。もう十分すぎるくらい走ったじゃないか。
それでも、夢見ることは止められないのだ。あの、信じられないような強さを、もう一度。
スタニングローズ
5歳 牝
R・ムーア
父キングカメハメハ
母ローザブランカ
17戦6勝
主な勝ち鞍
22年 秋華賞
24年 エリザベス女王杯
三冠を狙うスターズオンアースを破った秋華賞。オークス2着の無念を晴らす快勝であった。
しかし、その後精彩を欠く。6戦して掲示板に載れたのは一回のみ。
最盛期は過ぎてしまったのか。誰もがそう思う中、前走エリザベス女王杯で華麗なる復活。実に2年ぶりの勝利だった。
名牝ローザネイに始まる牝系、通称「薔薇一族」の末裔が、世界の名手ライアン・ムーアを背に連勝を狙う。
ベラジオオペラ
4歳 牡
父ロードカナロア
母エアルーティーン
(三代母にエアデジャヴー。近親にエアシャカール、エアメサイア)
横山和生(よこやまかずお)
10戦5勝
主な勝ち鞍
24年 大阪杯
23年 スプリングステークス(G2)
23年 チャレンジカップ(G3)
「4歳世代は弱いのではないか?」
そんな疑念の声が聞こえてくるようになったのは去年の有馬記念からだっただろうか。
クラシック三冠を激しく争い、分け合った三頭は世代の壁に跳ね返され、苦難の日々が続いていた。
そんな中、菊花賞を回避し、自らの研鑽を選んだ馬がいた。
その馬は世代の壁を乗り越え、大阪杯で悲願の、そして世代唯一の古馬混合G1タイトルを手にした。
鞍上とは一心同体。どのような展開にも、どのような競馬にも対応できる。
同世代たちが復調の兆しを見せ始めた秋、世代の「強さ」を示すことができるか?
プログノーシス
6歳 牡
三浦皇成(みうらこうせい)
父ディープインパクト
母ヴェルダ
16戦7勝
主な勝ち鞍
23年 金鯱賞(G2)
23年 札幌記念(G2)
24年 金鯱賞(G2)
実力はG1級。それはみんな分かっている。
実際、G1馬を何頭も負かしている。
海外G1を2着3回、天皇賞秋3着1回。あと少し、ほんのあと少しなのだ。
鞍上は三浦皇成、34歳の若さにして通算1078勝を誇る、押しも押されもせぬトップジョッキー。
不思議なことに、JRAでG1を勝利したことがない。地方の「G1級」競争は勝っている。あとは中央だけなのだ。
G1の2着は2回。いずれも人気薄での激走であった。あと少し、ほんのあと少しなのだ。
人馬とも悲願のG1,有馬で奪取なるか?
ジャスティンパレス
5歳 牡
坂井瑠星(さかいりゅうせい)
父ディープインパクト
母パレスルーマー
17戦5勝
主な勝ち鞍
23年 天皇賞・春
23年 阪神大賞典(G2)
22年 神戸新聞杯(G2)
ドウデュースが勝利した有馬記念。一番人気に押されたのはこの馬であった。
しかし、4着に敗れる。以降、鋭い末脚で常に存在感を示すも、なかなか勝ちにつながらない。
相対的に長距離レースの価値が低くなっているステイヤー受難の時代。適したレースを選ぶだけでも一苦労だ。
スタミナには自信がある。冬の中山、2500m。
必ず最後に飛んでくることは、みんなが知っている。あとはスタミナを活かせる展開にさえなれば。
ディープボンド
7歳 牡
幸英明(みゆきひであき)
30戦5勝
主な勝ち鞍
22年 阪神大賞典(G2)
21年 フォア賞(フランスG2)
21年 阪神大賞典(G2)
20年 京都新聞杯(G2)
重ねた戦歴、30戦。
稼いだ賞金、実に7億5000万。
G1の2着4回。その中でも、天皇賞・春3年連続2着は、他に例がない。
4年連続がかかった今年は、果敢に攻めるも3着。2着に入ったのは、のちに宝塚記念を勝つブローザホーンであった。
「もう終わったのかな……」と思わせておいて、そこから何度も復活を遂げてここまで来た。
前走の京都大賞典は過去最高体重からの2着。勝ち星から遠ざかってこそいるものの、状態は充実。秋の目標を、一番距離の長い有馬記念に早々に絞り、準備を重ねてきた。
有馬記念ファン投票では、G1未勝利馬からは唯一のランクイン。堂々の8位選出。
近年稀にみる「愛さずにはいられない」シルバー・ブロンズコレクター。四度目の有馬で。悲願なるか?
ハヤヤッコ
8歳 牡
吉田豊(よしだゆたか)
父キングカメハメハ
母マシュマロ
白毛馬
42戦7勝
主な勝ち鞍
19年 レパードステークス(G3)
22年 函館記念(G3)
24年 アルゼンチン共和国杯(G2)
えっと、年を取るにつれて白くなっていく芦毛と違って、生まれた時から白いのが白毛、です。突然変異なんで、そもそも絶対数がとても少ないんです。貴重なんです。
日本では「シラユキヒメ」という白毛の牝馬の一族を、ディープインパクトでも知られる金子オーナーが大事に大事に育てていまして、近年は以前よりも目にすることも多くなりました。
そんな白毛馬の重賞初勝利がこのハヤヤッコさんなんです! レパードステークス! 新潟ダート1800m! 10番人気での激走でした! すごいぞ!
しかしそのあと、ちょくちょく勝ちはするんですが、重賞だと少し力が足りないかなぁ? というレースが続きます。いやでも、重賞勝つだけでもすごいんだけども! しかも白毛だし!!
そしてさくっと3年後の夏の北海道。2戦前からダートから芝へ挑戦していたハヤヤッコさん、「力のいる洋芝」プラス「力のいる重馬場」という条件が重なった函館記念で見事勝利します! 7番人気での激走でした! やっぱりダートをこなせる馬は、パワーが要求されると強いね! すごいぞ!!
そのあとは芝を主戦場にして重賞へと挑む日々。一回2着がありましたが、基本掲示板に載るか載らないか。二桁着順もしばしばという、なんというか名脇役ポジションに収まります。いや、重賞勝つだけですごいんだけども!! しかも2勝よ!? さらに白毛よ!!??
そしてさくっと2年たって、24年秋。アルゼンチン共和国杯を10番人気から勝利します。
いやいやいや。芝よ? 東京競馬場よ? あなた、もう8歳だよ? なんでメンバー最速の末脚繰り出して勝ってるんですか? おまけにこれハンデ戦で、あなたトップハンデの58.5キロ背負ってるのよ? なに? なんなの?
そのあとも「状態はこれまでで今が一番」「8歳秋にして調教で自己ベストタイム更新」等のニュースが聞こえてきまして……
えーと、なに? この…………なんなん??
シャフリヤール
6歳 牡
C・デムーロ
父ディープインパクト
母ドバイマジェスティ
17戦4勝
主な勝ち鞍
21年 日本ダービー
22年 ドバイシーマクラシック
22年のドバイ以来勝ててはいないものの、その間もジャパンカップで2着1回3着1回、ドバイシーマクラシックで2着と5着、イギリスのプリンスオブウェールズステークスで4着、アメリカの芝レースの最高峰ブリーダーズカップターフで2年連続3着と、常に高いレベルの成績を残しつつけている実力派。
しかし、自分が勝った次の年のダービー馬にすっかり話題を奪われてしまって、どうも影が薄い。なぜだ? やっぱり、海外ばかり走ってるからか?
しまいにはあるレース前、某netkeibaのアカウントに「ダービー以来の勝利なるか!」と、ドバイでの勝利を忘れられる事態に。どうしてこうなった。
今回の鞍上は海外における主戦騎手C・デムーロ。この馬には8回も乗っている。海外騎手なのに。日本馬なのに。ドバイで勝った時もこの人だし。
そんな「影が薄くて人気がないけれど、勝っても何も不思議なところはない」という、実に不思議なポジションにいる馬。ここで勝ったら面白い。「俺だってダービー馬だ」って言いたいでしょ?
ブローザホーン
5歳 牡
菅原明良(すがわらあきら)
父エピファネイア
母オートクレール
母父デュランダル
22戦7勝
主な勝ち鞍
24年 宝塚記念
24年 日経新春杯(G2)
初勝利まで9戦かかった苦労人の晩成型。
重賞初制覇のかかった京都大賞典で心房細動を発症し競争中止したりと、波乱の競走馬生活であった。
そんな彼が天皇賞・春2着を経て挑んだ24年宝塚記念。
一番人気のドウデュースが重馬場に苦しみ馬群に沈むなか、メンバー中最速の末脚を繰り出して勝利。馬にとっても、ジョッキーにとっても、厩舎にとっても待望の初G1制覇となった。
この秋、異次元の末脚を繰り出して勝利を重ねているドウデュース。そのドウデュースが苦手とする、重馬場や荒れた馬場こそが、本馬が最も得意とするところ。
よく言われるように「競馬に絶対はない」。まさかの坂を駆け上がり、春秋グランプリ制覇を狙う
レガレイラ
3歳 牝
父スワーヴリチャード
母ロカ
戸崎圭太(とざきけいた)
7戦2勝
主な勝ち鞍
23年 ホープフルステークス
2歳の秋、果敢にホープフルSに出走し、牡馬を打ち破って見事勝利。
陣営は皐月賞からダービーというルートを選択するも、それぞれ6着、5着。
秋を迎え、ローズS5着、エリザベス女王杯5着と、苦悩の日々が続く。
全7戦中、6戦でメンバー最速の上りタイムと、能力自体に疑いはない。自分から前のポジションを取りに行けない、追い込み馬の宿命か。
今回の鞍上は新パートナーとなる戸崎圭太。能力馬が新境地を切り開くことができるか?
ローシャムパーク
5歳 牡
T・マーカンド
父ハービンジャー
母レネットグルーヴ
三代母エアグルーヴ
15戦6勝
主な勝ち鞍
23年 オールカマー(G2)
23年 函館記念(G3)
ドゥラメンテやルーラーシップなど、種牡馬の母、祖母としての活躍が近年印象深いエアグルーヴ。しかし、牝系の勢いも未だ健在である。
今年は大阪杯で惜しくも2着。秋は初戦の毎日王冠で10着と完敗するも、次走のブリーダーズカップターフでシャフリヤールに先着する2着。今が充実期であることは疑いがない。
中山はここまで5戦3勝3着1回の得意とするコース。持続力をフルに生かした捲りの競馬で、悲願のG1を狙う
そして金曜午後。有馬記念二日前。
ドウデュース出走取り消しという衝撃の知らせが駆け巡った。
レースの持つ意味が、一気に変動する。
「王者に挑む」レースが「次の王者を決めるレース」へ。
「勝ちたい」レースが「負けられない」レースへ。
第69回、混沌の有馬記念が幕を開ける。