万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

痩せない新古書店職人の朝は早い

ブックオフが出版業界から嫌われるホントの理由 : 2008-07-06 - 本屋のほんね

上記エントリ、続編にwktkなわけだけれども。きっと新刊書店員のブックオフ体験記みたいなものが読めるのかなぁなどと勝手に期待していたりするんだけれども、いや、どんな商売でも実際にやってみないとどんな仕事かは案外わからないもの。新古書店のやっている仕事というのを、まあ思いつくままに適当にあげつらっていこうかと思う。来るべき本屋のほんねさんの続編エントリと併せて読んでいただければなあなどと。



・買取
新古書店はお客さんから本を買い取る。どのくらい買い取るかは店の立地によるし規模によるし季節にもよる(そう、季節的な変動がとても大きい。年末と引っ越しシーズンは殺人的な量が押し寄せ、若手社員が退職を決意したりアルバイトが辞めたりする)。
買い取る量は私が勤めていた店だと平日で600冊〜1200冊、土日祝祭日で1500冊〜3000冊くらいかな。当然ながら買い取ることができない本も多いので、査定する量はもっと多い。さらにそこにゲーム・CD・DVDがプラスされる。土日の買い取りは戦場とかす。この買取は俺たちをミンチにしようとしている。
そうさな、あなたが中規模の新刊書店員であるとして、あなたの店の入荷量と同じかそれを上回る量の入荷が、朝から夜までやってくる。ピークタイムは11時から6時くらいだけれど、まあ、大口のお客さんが夜にやってくるなんて言うのもよくあること。


・陳列
買い取った商品は並べなければ売れない。並べなければならない。
その日に買い取った商品はその日のうちに並べるのが理想なのだが、まあ、それが無理な店というのも多い。というか無理。
当然、棚に入る本には限りがあるので、何かを抜いて何かを入れる作業となる。最初の巻よりは新しい巻の方を多めにとか、できるだけ巻がそろうようにとか、同じ方があったら汚い方を抜くとか、セオリーはないでもないけど、やっぱりここらへんは熟練が物を言う。
コミックで1時間に200冊棚入れくらいで早い方かなぁ? 文庫本はもっと時間がかかるし、陳列の準備作業(袋に入れたり値札付けたり本を削ったり)も発生する。
単純計算で3000冊やるのに15時間か。この棚入れは俺たちをミンチにしようとしている。


・買取価格や買取告知
買取価格や買取告知の変更・調整も大事な仕事だ。よりよく売れる商品や、あまり在庫がこないような商品の告知を強化したり買取価格を上げたりして、商品の多様性を確保していこうとする。
単品管理はしていないので、在庫状態は棚に張り付かないと把握できない。また、映像化する作品は人気も出るので、映像化情報もできるだけチェックする。ただまあ、一番の狙いは「高価買取の本と一緒に持ってきてくれる本」だったりする。高価買取はしていないけどあると非常においしい本というのがあって、それを集めるのが一番難しい。一番手っ取り早いのは買取そのものを増やすこと。で、買取にミンチにされる。
買取告知には個性が出る。大きく掲示してインパクト重視の人、戦争は数だとばかり何種類告知を出すかに命をかける人、小技をきかせて差し込み式の告知でする人、チラシ持ち帰り戦略重視の人、全部やろうとして体壊す人、十人十色だ。
この買取メンテナンスは俺たちをミンチにしようとしている。


・コーナー展開
さて、コーナー展開。
取次からMD計画書とか抜かすものが来たり、頼んでもいないフェア商品が知らん間にごそっとはいってきたりもしないのでやりたい放題なわけだが、狙い通りの在庫があるわけでもないし、売れ線の本が大量にあるわけでもない。簡単に言うと直木賞受賞の「のぼうの城」または「鼓笛隊の襲来」(勝手な予想)で一棚全部埋めたりするようなことは、在庫の関係上不可能(まあ、新刊書店でも時として不可能だったりするが)。いまある在庫で、その見せ方を如何に変えるかが大事になってくる。というか、それしかできない。
映像化した作品も、まあ、映像化するくらいだから新古書店では在庫が薄かったりするんだよな(笑)。コーナ作りたいんだけど。たまたま在庫が多かったら喜び勇んで作ったりするんだけど、考えてみれば映像化直前もしくは放映・公開中であるのに在庫が多い商品なわけで、売れ行きも期待外れだったりとかして(笑)。
だから芥川賞直木賞本屋大賞・このミス絡みでコーナー作るときも過去の受賞作やその時の候補作、受賞作家の過去作品を絡めて、過去の受賞リストを自前で作ったりする。あと、私がやったものではDSで「DS文学全集」が出た時に、収録作家の一覧を作ってその作家たちの作品を集めたコーナーとかは動きがよかったな。


・在庫確保
チェーン店では、他店からの在庫補充というのも重要になる。棚の多様性を高めるほかに、コミックの巻数抜けをそれでカバーしたり。
巻数が抜けている欲しい本リストを片手に、車でブーンと出かける。で、がっつりもらってくる。で、棚入れに戻る。


・POPメンテナンス
POPのメンテナンス。うん、重要重要。差し込みPOPね。劣化したり、なくなったりしてるやつの作り直しとか、最近増えてきた出版社の差し込みを作ったりとか。


・余った本をどうするか
ある意味、これが一番しんどい。
基本的に新古書店では販売数より買取数の方が多い。本はどうやったって増えていく。
棚入れというのは「店の利益にとって必要ではない本」を選別していく作業でもある。
で、余った本をどうするか。
チェーン店なら他店にもらってもらったり、段ボールに詰めて倉庫に放り込んだり、捨てたりする。
量が量なので体力的にしんどい。売上に直結もしないしねー。



今は何の因果か新刊書店員な私。実感としては、新古書店というのは新刊書店以上に量との戦いだな、と。
「書店員30歳定年説」なんていう自虐的なフレーズがあるけれども、これはもう断言するが、体力的には新古書店のほうが遥かにきつい(もちろん、だからって新刊書店が楽な仕事だなんていうつもりは毛頭ないよ。違う部分で大変ですよ)。
そりゃもう、効率化せにゃあやってられんくらい。
でも、不思議なことに痩せないんだよねぇ。どうしたらいいですか?