また落語会の感想なんであります。すいませんねぇ。最近、休日に落語を聞きに出かけるのだけが楽しみ、みたいな生活を送っておりまして……
んで、桂塩鯛すげえ。
桂雀々すげえ。
桂米二すげえ。
桂三枝、やっぱりすげえ、となったわけで。
で、天満天神繁昌亭の「しおにいじゃっくの会」に行ってきたのでありますが、話はその少し前。しおにいじゃっくの会は夜6時半開演だったのですが、実は昼席にも行ったのですよ。
初めて生で林家染二さんを見ることが出来たとか、森乃福郎さんは「太閤と白猿」なんてまた少し珍しい噺を聞かせてくれるなぁとか、笑福亭生喬さんが噺の後に「奴さん」を踊って、そういえば以前繁昌亭で林家正雀さんを見たときには、やはり「奴さん」を師匠の八代目正蔵師匠の真似しながら踊ってはったなぁとかあったんですが。
本日の昼席のトリは桂三枝師匠でありました。かけられたのは「背なで老いてる唐獅子牡丹」。
どんな噺か、あらすじはこちらのサイトさんを参照していただくと致しまして。
桂三枝師匠、ことしで68歳になられるわけで、老境に差し掛かっておられるといってもいいお歳になられたかと思います。
その方が高齢化社会をテーマにした落語でその日一番の笑いをとり、それどころか、噺の終盤で老いた任侠者二人が雨の中、傘も差さずに老人ホームの入り口からカチコミへと向かうところなんか、カッコよささえ感じてしまったわけでして。
すごいなぁ、と思ったんです。
滑稽なのに加えて、カッコよさまで感じさせられてしまって。
言葉は悪いかもしれませんが、老人が「老人は滑稽だ。でも、それに加えてカッコいいんだ」という創作落語で観客の心をかっさらう。すごいじゃないですか。カッコいいじゃないですか。
帰宅して三枝師匠のHPを確認したところ、このネタが作られたのは平成15年だそうで。6年前ですか。つーと、62歳の頃か。おおー。
とまあ、こんな感じで。
「やっぱり、三枝師匠ってすごいんだなぁ」というので、いい気分になりながらそのまま繁昌亭の周辺で時間をつぶし、夜の「しおにいじゃっくの会」へ。
まず桂塩鯛さん・桂米二さん・桂雀々さんのオープニングトーク。
塩鯛さん、少し堅苦しいような印象を勝手にこちらで持っていまして。オープニングトークはタレントとしてもテレビで顔を見ることが多い雀々さんの独壇場かなとか思っていたら、いや、一番しゃべったのは塩鯛さんでした。
塩鯛さんのフランクな姿に、こっちが勝手に抱いていたイメージが壊されて、期待も高まるというものです。
トークの後、登場したのはその塩鯛さん。「これで着物を2枚持っているということがお分かりいただけたかと思います」と、師匠であるざこばさん譲りのクスグリも入ったりしまして。演目は「鯛」でした。
料亭の生簀の中の鯛たちを主人公にした、なんとも風変わりな噺。実は筋だけ追っていくと結構えぐいんですよ。生簀に連れてこられたばかりの主人公が間一髪で生き造りにされる危機を脱し、生簀の中の先輩や長老に挨拶しているうちに、自分の代わりに網で掬われた鯛が生き造りにされ、お客さんに供されるのを目にし……サゲも、筋だけ追ったなら後味の悪い物だと思うんです。哀れが先に立ってしまうというか。
そこを、塩鯛さんはカラリと笑わせてくれるんです。陰湿な印象をこちらに抱かせずに、それどころか後味の悪いはずのサゲで少しほろりとさせられて。
動物テーマのほろりとさせられる話というと「まめだ」など連想してしまいますが、「鯛」の方が作中での「死」の描き様がショッキングなものである分、難しい物なんじゃないのかなあなどと初心者なりにぼんやり考えたりも致しまして。
中入の時に検索してみたら、この「鯛」の作者も三枝師匠。
おお、今日は三枝師匠の日か。やっぱりすごいんだなぁ……
お次は雀々さん。羽織は着ずに袴姿で登場。「蝦蟇の油」であります。
東京の寄席に行った話で盛り上がり、そのままの勢いで蝦蟇の油売りの口上へ突入し、その油売りがちょっと一杯のつもりでしこたま酔っぱらう、かと思いきやここでお酒好きのざこばさんの話へと盛大に脱線し(笑)。
そして、いよいよお待ちかね。すっかり酔っぱらった蝦蟇の油売りの口上が始まるのですが、これがもう圧巻でございました。
師匠である枝雀さんからして、酔っ払いの表現に定評のある方でしたし、上方落語でも「親子酒」「替り目」「上燗屋」など酔っ払いの噺を聞くことのできる機会は多いのですが、いや、ものすごかった!
客席もすっかりヒートアップし、最後、間違えて腕に切り傷をこしらえてしまった油売りがなんとか血を止めようと奮闘し、どこから出したのかついには手拭いを三枚も重ねてなおも止まらず……と、場内は笑いで揺れておりました。
今まで生で見たことのある枝雀一門の噺家さんだと、雀三郎さん、雀松さん、文我さんと、噺をしっかり聞かせる方の印象が強かったのですが、雀々さんや九雀さんは爆笑落語で。師弟関係って、本当に不思議なものですね。それぞれ個性があるのに見分けも付くというか。
吉朝一門の噺家さんも「吉朝一門ですっ」って感じがするもんなぁ。どんな感じかなんて、そんな難しいことは私では言い表せませんが。
中入が入り、最後は米二さん。きっちりと「口入屋」。
と、ここで落語初心者の私は困ってしまうんですが。自分の感想をどう言葉にしていいのかわからない。
「安定感」とか「本寸法」とか単語は浮かんできますし、また聞いてみたいと思いますし、でもこう、浮かんでこないんです。満足したんですよ? 休みの日がうまいこと都合ついたら、独演会とか行ってみたいんですよ?
「口入屋」はCDも持ってますが、その音源も嫌いじゃないんですけど、今日聞いた米二さんのほうが魅力的だったんですよ?
この先も落語を聞いていきたいんですけど、米二さんに感じた魅力をうまいこと表現できるようになれたらいいなぁ……
ともあれ、幸せな気分で家路についたのでした。
あと、あれですね。今日に備えて、前日にたっぷり睡眠をとっておいて、本当に良かった(笑)。よくあるんですよ。睡眠不足で見に行って、眠いの我慢できなかったり、頭痛がしてきて楽しみ切れなかったり。大事ね、体調管理。