万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

帯屋久七について思う事

今日はiPhoneで落語を聞きながら残業していた。松喬さんの「帯久」が印象深い。DVDBOXを音だけ録音してitunesに放り込んであるんだけど、この「帯久」、生で見てるんだよなぁ、私。
屋久七と言えば、和泉屋与兵衛に何度も金を借り、返すために持参した百両を与兵衛の隙を見て持ち帰り、更に火事で焼け出されて病に倒れ、10年かかってようやく床離れして金を借りに来た和泉屋与兵衛に金を貸すどころか罵ったうえに額を割って家からたたき出すという、上方落語きっての名悪役なんだけれども、この帯屋久七の人物像を掘り下げようという工夫がなされた高座も聞いたことがあって、それもまた印象に残っている。銀瓶さんと染二さんの「帯久」がそんな感じだった。
思うのだけれど、金を持ち逃げした時の帯屋久七は、和泉屋与兵衛を憎んだのだろうな。
それまでは長い間借りたままにすることもなく、きちんと借りた金を返していた帯屋久七が、百両を返す際には何か月もの時間がかかっている。百両もの大金、用意しようにも簡単にはいかなかったに違いない。
あちらこちらに頭を下げて、やっとの思いで用意した百両。ようやく返したと思ったら、和泉屋与兵衛は「店に来ている侍の相手をしなければならないから」と、ぽんと百両を放置したまま帯屋を置き去りにして部屋から出て行ってしまう。
あちこち駆け回って苦労に苦労を重ねて工面した百両を、それがほんの些細な、どうでもよいものであるかのように放り出され、帯屋はどのような心持だっただろうか。
その時に、帯屋が和泉屋に抱いていた様々な感情が憎悪へと変わってしまったのだろうなぁ。