万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

MikuHop LPの感想(大変気に入っています)

先日ダウンロードしたアルバムを大層気に入ったので、簡単に感想を書いておこうと思う。
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『MIKUHOP LP』 Release - Stripeless

”MikuHop LP“なるこのアルバム、上記URLより無料ダウンロードできる。いわゆるボーカロイドを使用したHIPHOPコンピレーションアルバムだ。
13曲入り。まるでレーベルのショウケースのような感じで、収録されている曲調は実に様々だ。アンダーグラウンド臭漂う曲から始まって次第にポップになっていき、終盤に向けてまた実験的になっていくという作りになっている。
個人的には、目新しさよりも好意的な意味で既視感を感じたアルバムだった。これをボーカロイドでやっているという意味では確かに目新しい部分はあるのだけれど、「ボーカロイド」というくくりを外すと、そこに広がるのはあの日聞いて首を揺らしていた音楽たちをしっかりと引き継いだ曲たちだ。
例えば1曲目の”It's da MIKUHOP”。ボーカロイドによるビートボックスの再現という実験意欲旺盛な作品だが、注目したいのはそのリリックだ。極めてシンプルで聞き取りやすいフロウに載せて語られるのは、アルバム及び曲名に冠された”MikuHop”というものがどういうものであるかについての自己言及。リリック内の”MikuHop”を"HIPHOP"に置き換えてみてほしい。日本語ラップを確立しようと奮闘してきた先駆者たちがリスナーにHIPHOPとはどういうものであるのかを示そうとしていたあの自己言及と重なりはしないだろうか。
例えば3曲目の”ミッキーマウス”。収録曲の中ではおそらくもっともアングラ臭溢れる曲であり、ラップ的にも最もとんがっている(ちなみに、このアルバムにはインスト曲も多い)が、この印象的な裏返る様なフロウにも、Commonの1stアルバムやAkinyeleの諸作と言った先駆者が存在する。
例えば4曲目の”灯”。birdとかTinaとか嶋野百恵とかShowleeとかもっと流行ると信じて疑わなかったんだよ、畜生! まあ、御存じのとおりヒットチャート的およびシーン的には安室奈美恵に代表されるように、それよりちょっとだけ後のUSにおけるR&Bの影響を受けた歌姫ばっかしになっちゃったんだけどさ。
まあ、こういったことをぐちぐちと書いて行ってもきりがないのでここら辺で止めておくけれども、指摘しておきたいのはHIPHOPに呪いみたいにまとわりつき続けるマッチョイズム(ハードコアと言い換えてもいい)、およびボーカロイドのキャラクター性、また支持を集めている既存のボーカロイド曲の特徴として指摘されるストーリー性といった諸要素から、このアルバムに収録された楽曲たちは自由だということだ。
唯一の例外が7曲目の”放課後はライムマスター”。この曲はボーカロイドのキャラクター性に依っていると言えるが、この曲にしても使用しているボーカロイド蒼姫ラピス、マクネナナ、メルリですよ。決してメジャーとは言えない。キャラクター性を生かすのならもっとメジャーなキャラ使っておけばいいってな話なんだけれど(笑)。
そういったわけで、このアルバムは、既存の素晴らしいHIPHOPやその周辺の音楽をいっぱいに吸収して、それをボーカロイドを使うという形で表現しつつも、HIPHOPボーカロイドにいつの間にか付随してしまっていたいくつかの要素から自由に離れてみせた曲が多く収められている、と言えると思う。
そういった曲が公開されるのはこれが初めてではない。このアルバムに参加している人たちも以前から複数の曲を公開しているし、このアルバムに参加はしていないがニコニコ動画で多くの再生数を稼いでいる楽曲もある(ぱっと思い浮かぶのはショミさんかなぁ)。しかし、そういった曲をまとめることで緩やかなコンセプトを提示して見せたこのアルバムは、私にとって非常に好ましい意義を持つ。


ここまできたら触れないわけにもいかんか。えーと、このMIKUHOP LPに対するdis曲と言うのも公開された。



私は二つの理由でこの曲が好きではない。一つ目の理由はまさに上記の要素、ハードコアのマッチョイズムとボーカロイドのキャラクター性に依存した曲であること。二つ目の理由は、単純にカッコ悪い曲であること。

さらに、これに対するアンサーも公開されている。

私は、単純なカッコよさでこちらの方に軍配を上げるが、あなたはどうだろうか。