書くことがないなら書かなくてもいいのである。
そもそも、なにか意味を通ったことを書くこともない。
とはいえ、「何も意味をなさないことを書くぞ!」と意気込むのも、また違う気がする。そんな前衛的なことはバロウズにでも任せときゃいいのだ。
一番いいのは飼っている猿にでもキーボードを打たせることだ。確かラファティの短編に、さらにタイプライターを打たせ、それを無限回試行し、なんとかシェイクスピアの作品を完成させようとするものがあった。あれである。
しかし、私は猿を飼っていない。そもそも何も飼ってはいない。この部屋に私の他にいる生物で私がはっきりと認識しているものといえば、ちょくちょく壁を這っているハエトリグモくらいなものだ。ハエトリグモはかわいい。
ハエトリグモにキーボードが打てればいいのだが、おそらく、サイズの関係で大変難しいだろう。
仕方なく、クモの代わりに私が打っている。