万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

暦と数の話/スティーヴン・ジェイ・グールド

ティーヴン・ジェイ・グールドが、「新たな千年紀が始まるのは西暦2000年1月1日か、2001年1月1日か」というかなりどうでもいい大問題を枕に、キリスト教圏における終末思想の歴史や、様々な暦における誤差の問題にまで手を広げたエッセイ。正直言って、グールドのエッセイとしては並の出来。一見バラバラに見える様々な事柄をつなぎ合わせて、読者に認識の変更を迫ってくるいつものキレがないし。やはり、進化論・古生物学・地質学・科学史といった自らの専門分野から離れた内容であるということも影響しているのかもしれない。

しかし、一番最後にとても秀逸なエピローグが待っている。まさか科学ノンフィクションで「うわー、みんなに話したい! でもネタバレしたくない!」という思いをすることになるとは思わなかったのだけれど、それまでの(グールドにしては比較的)凡庸な内容がそこに収束するかのような見事なラスト。特に一番最後のパラグラフ。あんなに素敵な文章には、そうそうお目にかかれるものじゃない。
今は2006年なので、正直かなり時期を逸した本であるし、グールドのエッセイを読んだことがないという人にはこの本じゃなくて別の本から始めて欲しいのだけれど、機会があったら是非味わってもらいたいと思う。いや、ちょっと感動した。