万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

9月14日 できちゃったらくご〜新作ネタおろしの会〜/たまさんの「ぼくは米朝一門」で腹筋崩壊した

動楽亭へ「できちゃったらくご〜新作ネタおろしの会」のために行ってきました。この落語会を見るのは初めてです。
桂あやめさんに密着取材しているとのことで、NHKのカメラが会場内に。NHKのEテレで、10月13日に放送予定とのこと。番組名は「グラン・ジュテ 私が跳んだ日」だそうです。


桂あやめ…大阪で言うと
月亭遊方…結婚妄想曲
桂三金…天の岩戸
桂三風…言葉の魔術
中入
旭堂南湖…旭堂南北一代記 血染めの太鼓
笑福亭たま…ぼくは米朝一門


開演前に出演順を決めるためみんなでジャンケン。あやめさんはつい先日一回かけたネタを本日もかける、遊方さんはギリギリまで奮闘したがネタがまとまらずかなり以前に一回やったネタをかける、と、このお二人はネタ下ろしではないためにまずはこのお二人がジャンケン。あやめさんが勝つも、直前になってネタ下ろしではないネタに変更した遊方さんがネタを覚えるために、必死でネタの台本を熟読中であるのに配慮してトップバッターに。
あやめさんの「大阪で言うと」は、「新婚旅行に夫の両親がついてきたので、少しむくれ気味の新婦。しかし気を取り直して、元キャビンアテンダントの経歴を生かし新婚旅行の地・ニューヨークを義理の両親に案内しようとするが、生粋の大阪人の両親は見るもの聞くものすべて大阪で言ったら何になるかに例えてしまい……」というお話。
夢いっぱいの新婚旅行の地が、義理の両親によってどんどん矮小化されていく様子に、泣きそうになる新婦の様子がとてもかわいらしかったです。大阪のオッサン・オバチャンである両親から新婦に切り替わるたびに、スッと美人スイッチが入る感じで。元々が美人さんやもんなぁ。


遊方さんの「結婚妄想曲」は「誰に反対されているわけでもないのに、突然『駆け落ちしよう』と言い出す恋人。聞いてみると、彼女は『障害を乗り越えた末での結婚』に過大な憧れを抱いており、彼女の脳内で『駆け落ち』はどんどん膨らんで行って……」というお話。
これも気楽に笑える噺でした。やっぱり駆け落ちはみんな北へ向かうんだわなぁ(笑)。あなたのプリウスでは駆け落ちに似合わないから電車で、しかも敢えてローカル線で行こうとか、駆け落ちした先で営むのは小料理屋、絶対に小料理屋。世の小料理屋はすべて元々は駆け落ちした二人が……とか(笑)。オチもきれいに決まっていい感じでした。


三金さん「天の岩戸」は、古事記にまつわる落語を依頼されているとのことで、そのために考えた古事記の話。天岩戸に閉じこもった天照を引っ張り出すために天岩戸の前で演芸を始める話。古事記小話をいくつか披露した後はお得意の余芸・バルーンアートへ移行。気が付けば中トリ前に色物が挟まるという、まるで寄席みたいな形に。


三風さん「言葉の魔術」は、「挨拶がうまくできないばかりに銀行を首になり、今はガードマンをやっている男。奥さんにも発破をかけられ『これではいかん』と、街行く人に声をかけようとするが……」という話。
マクラで、修業時代に遭遇した「挨拶は大事だ」というエピソードを話されたのですが、これがちょっとガチでして。「うわぁ……修業って、そんな大変なことがあるんだ……」と少し引いてしまい、ちょっと最後まで話に入り込めなかった感じ。
ただ、以前繁昌亭の昼席で聞かせていただいた「ハンカチ」にも通じるような、泣かせる要素のある、ペーソスあふれる話なので、この先練られていったものを聞きたいネタでありました。


中入後は南湖さんで「旭堂南北一代記 血染めの太鼓」。なんと一門の兄弟子である旭堂南北さんの一代記……のはずが、いつの間にやら南北さんが応援団としてスタンドで応援していた春の選抜高校野球準決勝・達川擁する広島商業VSあの江川卓を擁する作新学園戦に移行するとと俄然ヒートアップ。スポーツの名勝負を講談で聞くというのは、これ、大いにアリかも。すごく面白いですよ。
ペナントレース優勝をかけた近鉄バファローズ運命のダブルヘッダーとか、川田がタイトル戦で初めて三沢を下した三沢対川田の三冠統一王者戦とかあったら、燃えるぜ、間違いなく。


トリのたまさん。これがもう大爆笑。
タイトルからして「ぼくは米朝一門」って、もう卑怯でしょ(笑)。タイトルを言っただけで場内爆笑。
先日の彦八祭りでも笑福亭一門と米朝一門の対抗戦的な落語会があったそうですが、それに発想を得たのでしょうか。「迫りくる笑福亭対米朝一門の対抗戦、若手部門でトリを務めることになった米朝一門のホープ。しかし、中トリで笑福亭一門のホープが「笑福亭と言えばこれ!」という大ネタ「らくだ」をかけることを知り、それに対抗するため兄弟子の下へ相談にいくが……」という話。
落語家の個人名が頻発するのかと言ったらそれほどでもなく(名前が出てきたのは鶴笑さん、たまさん、米朝師匠の三人のみでした)、「『らくだ』に対抗するような大ネタとは?」を巡りメタな笑いの嵐。めんどくさがった兄弟子は「子ほめ」や「つる」を稽古しようとしたり、いざ「百年目」を稽古することになったら奇想天外な特訓方法を実践したり*1
クライマックスでは笑福亭一門で中トリをつとめるたまさんご本人による劇中劇ならぬ噺中噺「らくだ」を披露。実際に演じられる部分では端正さを感じさせつつもそれを崩して爆笑につなげていくという。
考えてみると師匠である福笑さんの古典もそうですよね。破天荒な笑いに包まれつつも、実は非常に綿密に組み立てられている。録音された音源などを聞いてみますと「うわ、ここでサゲへの伏線を貼っているんだ……」とか「うお、この枕、クライマックスに見事につながるじゃないか……」とか、驚嘆の連続ですし。
一同介してのクロージングでおっしゃってましたが、福笑師匠の独演会でかけようと考えたがマニアックすぎるかもと断念したネタだそうでして、道理で完成度が高いはずです。


大爆笑して、心地よく帰宅。

*1:ただ、その特訓というのがいずれも基本的な所作を強化する特訓だったというのは、後から考えると非常に興味深かったです。先日NHK「ディープピープル」で三枝・昇太・談春の師匠方による対談が放送されたのですが、その中で基本的な所作の重要性について語られていたことを思い出したり