惰眠を貪っていた私を強引に起こしたのは、隣の部屋の非常ベルでした。
しかも鳴り止みません。
一大事か。
すわ何事。
いざ鎌倉。
急病? 強盗? 殺人? 暴行? 火事? 医療過誤? いや、それはありえない。アパートだし。
パンツ一丁で寝ていたので急いで服を着て外に出ると、外は雨。
な、わけねえやな。空からは腹が立つほどの日差しだ。でも、上から水がばしゃばしゃと。
で、隣の部屋のお姉さんが丁度ブレーカーを落として非常ベルを切るところでした。見ると、部屋の中は水浸し。
どうやら、上の部屋の住人が、水を出しっぱなしにしていったらしい。上の階に行って見ると、ドアの下から水が流れ出て偉いことに。それが真下の部屋に漏れちゃったのね。
とりあえず、えーと、あれ、なんていうんだ、車から雪とか氷とか引っぺがすのに使う、巨大なゴムヘラみたいな奴、水の掻き出すのに使えるだろうと、あれをお隣さんに貸して、部屋に戻った。
確か、水を洩らした2階の部屋は、以前にも真夜中に大音量で音楽を流していて、しかもそれが俺も持っているアルバムだったりして、非常に腹立たしかった覚えがある。低音は響くんだよ、馬鹿野郎。
ちなみに、そのとき流れていたのはクリップスのグラインディングっつう曲だった。曲のセレクトが、ますます腹立たしい。真夜中にネプチューンズがプロデュースした曲を大音響で聞いている、そのシチュエーションがとてつもなく嫌だ。絶対に真似をしたくない。
つーか、ヘッドフォンくらい持ってないのか。
今度会ったら、そいつの部屋に上がりこんで、部屋中のCDを叩き割ってやる。住人の顔、知らんが。