万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

2008年に読んだ面白かった本のことでも書こうかと「既読本入れ用ダンボール」を漁ってみたが、本当にこの本を2008年に読んだのかいまいち自信が持てない件について

いま一つ自信が持てない。2009年は何を読んだかくらい記録を取るようにしよう…。
というわけで、2008年刊行じゃない本も混ぜています。


アイドルを好きになる気持ちというのがいま一つ分からなかったのだけれど、それを擬似的に追体験させてくれる本。非アイドルオタの人ほど、楽しめるのではなかろうか。


Amazonさんにオススメされて読んだ本。進化における「偶然」の要素を大きく見るって考えにはグールドで初めて触れたのだけれど、いわばその大御所的な人(なのかな? 序文はグールドです)の著書。内容としては胸がドキドキワクワクのカセキホリダーな検討よりは数学的な検討の方が主なのだけれど、数学さっぱりな私でもすいすい読めた。


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進化を推し進めた要因を提案する本というと、近年読んだ中では「眼の誕生」(眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く)が残っているけれど、本書は酸素濃度の変動にその要因を求めた本。最近、やはり進化を推し進めた要因として酸素濃度を重視するようなニュースもあったなぁ(地球の生物は2度急激に進化、酸素濃度が関係 米研究 国際ニュース : AFPBB News)。


人体とその他の動物とのつながりについての本というと、解剖学を基にそれを論じた「人体 失敗の進化史」([asin:433403358X:title])が非常に面白かったけれど、本書は解剖学のみならずカセキホリダー的な古生物学や、エボデボアザラクな遺伝や発生をも視野に入れて広範に論じた本。何気にドーキンスの「祖先の物語」([asin:4093562113][asin:4093562121])に匹敵する内容をコンパクトにまとめた好著。


ある病気にかかるということの進化的な背景についてのちょっとした話を楽しく読んでいくと、いつの間にやら大胆不敵なエピジェネティックの世界に読者を引きずり込もうとする挑発的な本。面白いぜー。


一般向けの行動経済学入門書、ってな位置づけになるんだろうな。この分野に不案内なこともあり、社会心理学が社会にささやかに逆襲しているみたいな感じで妄想しながら面白く読めた。簡単に言うと、物を購入する場面やあるものとあるものを比較するような場面、労働に従事するような場面での意思決定・選択についての楽しく読める愉快な本。たとえば普通のビールとバルサミコ酢入りのビール、どっちがおいしいと思います? …なるほど、あなたはそう思いますか。ところがね、調べてみると案外そうでもないんですよ。えーとね…


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オオカミ少女やクレバー・ハンス、サブリミナル効果やシリル・バートによる双生児研究データ捏造といった有名なエピソードは実は嘘だった…だけで済むんだったら普通の本なんだが、なぜそういった「真実ではない」話が定着したのかにまで話を広げているのが面白い。また、過去の誤りを取り上げるだけではなく、今はあまり顧みられなくなった研究・アプローチの再検討などもやっていたりして。個々の話題に関するボリュームがちょっと物足りないのが残念だけれど、楽しめたですよ。


文明が気まぐれな中・長期的な気候変動にいかに翻弄されてきたかについての本。ジャレド・ダイヤモンドの「銃、病原菌、鉄」([asin:4794210051][asin:479421006X])や「文明崩壊」([asin:4794214642][asin:4794214650])と同じ方向を向いたアプローチの、また、同じ程度に話題になるべき本。


これは全人類必読の名著だお!
私の感想はリンク先を読んでいただけるとありがたいんだけれど、実は一番のお勧めは一冊ではなく、「ダーウィン以来」に始まる、一連のエッセイであったりする。単著での主張はエッセイの中にも色濃く見られるし、話題も多岐にわたり、ユーモアも魅力的。最後のエッセイ集“I have landed”が訳されるのが待ち遠しい…


本書の253ページを要参照のこと。
ノベライズはついつい敬遠してしまうのだけれど、本書を買うにあたっては一切ためらわなかったし、明らかに得な買い物であった。


個人的に、2008年は「この創元SF文庫がすごい!」な年だった。2008年に惜しまれつつ宇宙へ旅立った野田昌宏中二病っぽい表現だが、この表現が相応しいひとは野田昌宏以外にいないと思うんだ)の、ノスタルジアを刺激してやまない(なんでだろうね。決して狙ってはいないんだよ)作品集&エッセイ集と、抑制の利いた文体で個人の苦悩、組織論、文明論、様々なものを内包した眉村卓の傑作。第一世代は伊達ではないということを実感できた。「第一世代」と呼ばれるSF作家に対する反応、ネットでは筒井康隆についての文章はよく見かけるし、小松左京もたまに見るのだけれど、いやいや、やっぱりすごいんだよ、あの人たち。


これまで翻訳された作品からは「……地味」という印象が強かったロバート・チャールズ・ウィルスンが、なんとヒューゴー賞を受賞しちゃった、一体どうしたんだという本作。いざ読んでみたら主人公たちの人生を数十年という長いスパンで丹念に書いていくという要素と、SF的な大仕掛けがもたらすwktkを見事に融合させた本だった。本書はシリーズの一作目とのこと。ネット上では好意的な書評を見ることも多い。続編が順調に翻訳されますように。目新しさや衝撃はないが、傑作と呼ぶべき作品だと思う。ヒューゴー賞作品に対して言うべきことではない気がするけれど、星雲賞、取るべきだよなあ。





こうして振り返ると、私にとっては小説以外の本が印象に残った年だったんだなぁ。2009年はもうちょっと読書量を増やして小説も読んでいきたいっすね。