なんかね、読書メーターでそんな企画があったんで、自分のブログでも取り上げてみようかと。
「不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生」(レベッカ・スクルート/講談社)
ある黒人女性の細胞がどのような数奇な運命を辿ったかの物語であると思って購入したんだけど、ある女性がちんぷんかんぷんであった「科学」とどのように遭遇し、どのように和解し、自らの人生を救ったかという感動の物語であった。「学ぶ」というのはこういう事なのだな。
「偉大な記憶力の物語」(A・R・ルリヤ/岩波書店)
「この人物は直感像と、決して忘却しないという能力を持っている」この、文字にすると実に単純に見える「違い」が、如何に異質な知性の在り方として結実するか。「異質な知性とは」という問題に切り込んでいく、SF関係者必読の本。
「生と死の自然史」(ニック・レーン/東海大学出版会)
進化とは酸素との戦いであった的な、「酸素とのかかわり」という観点から進化や生命を見てみた好著。つーか、「酸素なければ老化しない気がするんだけど、なかなかうまくいかんねえ」的な(笑)。
「ぼくは上陸している(上・下)(スティーブン・J・グールド/早川書房)
グールド最後のエッセイ集であるから、読むのは義務と言える。
「錯覚の科学」(クリストファー・チャブリス&ダニエル・シモンズ/文藝春秋)
人間の記憶、判断等が如何にあてにならないものか。こんなにも変容し、こんなにも外部の影響を受けるものかという、人間が信用できなくなる本。というか、「人間ってきみが思っているよりあてにならないんだよ」という人間観は、マジでより人口に膾炙すべき。
「移行化石の発見」(クリストファー・スウィーテク/文芸春秋)
古生物学方面からの、進化についてのいい入門書だと思うですよ。
「文科系のためのヒップホップ入門」(長谷川町蔵、大和田俊之/アルテスパブリッシング)
「音楽的な評価」というところから外れたところからヒップホップを楽しむという本。それでいて、音楽的な流れもきっちり文中には組み込まれていて非常に面白かった。ごくごく簡単にいうと「あいつすげえ! ラップが強え!」という評価軸があるという、目から鱗ですわ。
「高杉さん家のおべんとう」(柳原望/メディアファクトリー)
アカデミスム的な面白さと青臭い面白さがいーい感じで同居していて、あーた、こんなにキャリア積んでるのにこのタイミングで最高傑作って、あーた。
「海街diary」(吉田秋生/小学館)
誰も死んだり殺されたりしない、「河よりも長くゆるやかに」や「ラヴァーズキス」や「夢みる頃を過ぎても」の吉田秋生が、ヒリヒリするような感じではない真綿で首を絞めるような切なさで帰ってきた、みたいな。
「たまちゃんハウス」(逢坂みえこ/集英社)
上方落語を題材にした貴重なコミック。愛情たっぷり。桂枝雀版の「青菜」のテキストを使いながら、絵と描写で演者による演じ分けを表現したりとか、秀逸。
「秘密」(清水玲子/白泉社)
今年、このシリーズを読み始めて、その陰惨さと涙腺ブレイカーぶりはすごいなと思っていたら、急展開しちゃって、今大変なことになっているという。
隠し玉的な一冊。これを女性向けレーベルから出して大丈夫であろうかという、エクセルサーガ初期のノリ。
2冊でコンパクトにまとまってしまって、いいラストだったけどももっと続きを読みたかった。ファンタジーものの4コマでこのレベルに達しているものって、なかなかないですよ。というか、俺の中では「棺担ぎのクロ」と同格。
シンプルですっきり見やすくかわいらしいという、絵柄がまず俺の好みすぎるのだけれど、お仕事4コマとしてもクオリティ高くて二度おいしい。戯画化しつつもツボを押さえるという、「ラディカルホスピタル」にも通じる、お手本のようなお仕事4コマっぷり。「看板娘はさしおさえ」なんかも思い出す。
キャラが立ってるのですよ。雑誌で読んではいたのだけれど、まとめて読んでみると予想以上に立っていて、好感持ったの。
「天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち」(小川一水/早川書房)
シリーズの中でも割と賛否両論あったような気がする4巻だけど、俺は諸手を挙げて賞賛するクチで。スペースオペラではあるんだけどさ、このご時世に、「理想のセックスとは何か」なんていうのを中心テーマにポルノを発表しますか、と。状況的な意味で、今年読んだ中で最も攻撃的な一冊だったのではないかと思う。
「アレクシア女史。倫敦で吸血鬼と戦う」(ゲイル・キャリガー/早川書房)
キャラの勝利。小難しいこと考えずに読める女性向けロマンス成分多めのラノベ。というか、二作目以降に登場する男装の麗人マダム・ルフォーの画像を誰か下さい。お願いします。
落語に出会った地方都市のOLが落語に魅了されていく、落語入門にはうってつけの、というか、まさに落語入門者であった俺にうってつけだった一冊。地方都市が舞台である故にプロの噺家が一切登場せず、落語とのかかわりがCDを中心に構成されていくというのも興味深い点かも。
異形の未来像は魅力的ではあるのだけれど、「天冥の標」と続けざまに読んじゃって、衝撃度で負けちゃったのよね。惜しい読み方しちゃったかも。
「三題噺 示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帳」(愛川晶/原書房)
当初はシリーズ最終巻の予定だった本。エピローグとなる章の風呂敷のたたみ方が実に素晴らしい。