万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

ニック・レーンを読もうぜ/細胞内から40億年を眺める

さて、結構時間がかかってしまったのだけれど、今日、「ミトコンドリアが進化を決めた」を読み終わりまして、これで邦訳されているニック・レーンの本は三冊とも読んだことになります。



「生と死の自然史」「ミトコンドリアが進化を決めた」が各論で、「生命の跳躍」が総論、といった趣があるので、この中から1冊お勧めするとしたら「生命の跳躍」かも。しかし、ニック・レーンの持ち味を満喫するという意味ではその前の2冊の方がいい、などという気もしたり。どれも面白いことには間違いないです。


間違いないのですが、少々難しいかも。
SFファンや一般向け科学書が好き、という人には「よく分かんない部分があっても知ったふりして笑顔でスルーする」というスキルが必須だと思うのですが、ニック・レーンの本もそのスキルが必要だと思います。文章自体は平易だと思うし、話の進め方もうまいと思うのですが、なにせ、馴染みのない分野の言葉が結構出てきますので。
生化学、っつーんですかね?
酵素の名前やタンパク質の名前、分子構造の話題、なんてのが頻繁に出てきます。
これこそがニック・レーンの著書の特徴、という事になるのでしょうが、いわば「ありそうでなかった」本なのですよね。
進化についての本というと、それは化石から広がる話でったり*1、動物の行動からであったり*2、遺伝子の話であったり、etc……
ニック・レーンは細胞レベル、どころか、細胞より小さなレベル。細胞の内部で何が起こっており、かつて何が起こってきたのか? というミクロな視点から40億年の歴史を紡いでいくという、とんでもない芸当を披露しているのです。
かつて、細胞に何が起こったのか? 今、細胞の中で何が起こっているのか? そして過去と今をつなぐ要素は一体なんなのか? なんでそんなことが起こったのか?
化石と科学史の権化であるグールド、包括適応度の守護聖人ドーキンス、この両者とはまた別の*3、細胞内が進化のワンダーランドであることを鮮やかに描いて見せるニック・レーン。ものすごくお勧めです。

*1:グールドの専門はこれ

*2:ドーキンスのルーツはここ

*3:とはいっても敵対しているわけでも矛盾しているわけでもありません