一心寺シアター倶楽 桂春蝶 落語で伝えたい想い
紋四郎…千早ふる
春蝶…野崎参り
春蝶…権助提灯
中入
春蝶…明日ある君へ 知覧特攻物語
若い女性客、多っ!
まあ、お目当てはトリの新作ですよ。ロマンチストの春蝶さんが、特攻と言う題材をどのように扱うのか。特攻賛美だったら容赦なくDISしてやろうとか、ちょっと意地悪な気持ちで向かったわけです。
で、結果、特攻賛美でも戦争賛美でもなく、ちょっと教訓っぽくなってしまいかけたところ、終盤でロマンティシズムが実に効果的に現れて、その場面では思わずちょっと涙腺にきてしまったんでありますが。
今日の春蝶さんの落語会、演劇みたくカーテンコールがあったんだけど、そこで「生と死」というのが、自分のテーマとしてある、ということをおっしゃっていました。そうすると「高尾」のラストの改変であるとか、地獄八景の改変であるとかが、なんとなく腑に落ちます。
春蝶さんはロマンチストというような印象があったのだけれど、それって、死生観を「こうであって欲しい」という願望を色濃く反映した形で表現するから、そう感じるのかもしれない。
今日の「明日ある君へ 知覧特攻物語」もそうだったなぁ……こうだったらいいのに! とか思っちゃったもん。須藤真澄作品みたい。
ただ、なにせ題材が実に巨大で奥深いものであるので、いい作品だけれどもっともっと深めていってほしい、というのが偽らざる感想です。
今日見た「明日ある君へ 知覧特攻物語」は、特攻のある大事な一面を掬い上げたものであることは間違いないと思うけれど、他にも掬い上げなければいけないものは「特攻」という事柄に限定しても、残っているように思えてですね。それがこの噺の中に含まれるのか、また別の噺になるのかはわかりませんが、春蝶さんご自身が「一生かけて」と最後におっしゃっていたように、長い時間をかけて取り組んでいってほしいのです。