最近、仕事の方がちょいと忙しくて、なかなかブログを書こうという気分になれなかったのだけれど、今日は書きますよ。感動したからね。
洛北葵寄席
そうば…十徳
ちょうば…京の茶漬
内海英華(女道楽)
米二…代書
そうばさんの十徳、今まで何度も聞いたネタだったんですが、マクラが聞いたことのないモノだったせいか、それとも他の要因か(間の取り方とか変えてはったのかしらん? わかりませんけど)、新鮮に楽しめたし、ちょうばさんも京都出身であることを十二分に生かしたマクラから楽しくて、くっと引くところで笑わせるようないい高座だったし、英華さんは、もうね、実はこの方の喋り、大好きなのですよ。三味線や唄はもちろん楽しいけれど、ぶっちゃけ、私には良し悪しまではわからないもの(笑)。
というわけで、かなり満足度が高い状態でトリを迎えたわけです。
「代書」はご自身の著書「上方落語十八番でございます」でも取り上げてらっしゃった演目。前半部分のみ演じられることがい多く、フルバージョンに出会える頻度は低いです。幸いにして代書フルバージョン、聞いたことはあるけれど米二さんのそれはこれが初めて。
その米二さん、上記の本の192ページでこんな事を書いてらっしゃいます。引用しましょう。
前半だけでよいとおっしゃる方には私の「代書」を聴いてもらう必要はありません。どうぞ三代目師匠*1のすばらしいものをお聴きください。または兄弟子の枝雀のCDをお聴きください。
フルバージョンであることにこだわりを持ってらっしゃるようで。
さすがでした。先ほども書いた通り、なかなかフルバージョンで聞けない話ですが、今まで聞いた中ではダントツです。群を抜いている。
代書はご存じのとおり、代書屋とそこを訪れたお客さんの珍妙なやり取りを演じる爆笑譚。枝雀さんと春團治師匠の得意ネタですが、お二人とも前半部、一人目の客とのやり取りのみを演じておられます。
枝雀さんの代書の場合、噺の主役はもう完全にお客さんの「松本留五郎」*2。
話はそれますが、枝雀一門、雀三郎さんのお弟子さんの雀太さん。「代書」を独特なキャラクターでご陽気に演じておられ、大変面白いです。
春團治師匠になると、やり取り自体の面白さに重点が置かれ、どちらが主役ということもなくなってきます。枝雀さんと比べると、より代書屋自身に焦点を当てているという事も可能でありましょう。
そして今日の米二さんの「代書」
主役はもう完全に、代書屋の中濱氏です。*3。
個性的なお客さんの言動がおもしろおかしいのではなくて、いや、おもしろおかしくはあるのですがそれ以上に、個性的な面々に翻弄される代書屋さんの様子がもうたまらなくおかしい。
綺麗な履歴書を書きたいのにお客さんが必要のないことまでベラベラ喋るせいで訂正せざるを得なくなり、履歴書に取り消し線を入れるときの泣きそうな顔。お客さんのリクエストに応えて新品の筆と墨をおろしたのに結局「余所で頼む」と去っていくお客さんの背中に、おろしたての筆と墨を掲げて呼び止めようとするところ。などなど。リアルで吹き出しましたもの。
そもそもが、ブツブツとぼやくおじさんをやらせたら面白い米二さんです。そのはまり役が全編出ずっぱりですから。もうね。ものすごいですよ。
そして思ったのです。この面白さは、フルバージョンの代書ならではなのではないか。
「代書」で代書屋自身を主役に据えるには、フルバージョンがその最適解なのではなかろうか、と。
えーとつまり、「代書」の主役は実は代書屋自身であったわけで。これはもう私にとっては大発見です。
本当に良い物を聞かせてもらいました。