亡くなられた柳家小三治師匠、マクラのみの会を収録した音源も出されているのだが、その中で「駐車場物語」というものがある。自宅のガレージにホームレスが住み着いてしまってさあ大変、という話で、まあ、楽しい。楽しいのだが、終わり方には、少しやりきれない寂しさが漂う。
終わり方としてはハッピーエンドなのである。でも、もちろんこれは勝手な推測なのだが、その終わりの前の小三治師匠の口調に寂しさが滲んでいるように思えて、それが「ああ、このハッピーエンドは、お客さんの前で話すためにこしらえたハッピーエンドであって、ほんとうはこんな幸せなことにはならなかったんだろうな」と、ついつい感じ取ってしまうのだ。
演者たる小三治師匠も微笑んでいる。客としてのこちらもみんな楽しんでいる。でも、みんなが「本当はこうはならなかったんだ」というやり切れなさを知った上で、その中で笑っている。