万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

日記。噺家生活45周年記念 桂米二独演会編。

日曜日、電車を乗り継ぎ京都府立文化芸術会館へ。米二さんの独演会。

 

噺家生活45周年記念 桂米二独演会 米朝&仁鶴トリビュート落語会

 

二豆…道具屋

米二…青菜

米二…火事場盗人

中入

仁智…スタディ・ベースボール

米二…住吉駕籠

 

今日の一番はなんといっても中トリの「火事場盗人」。小佐田貞雄さん作のこの演目、聞くのは5回目。最後に聞いたのは2014年なので、なんと7年前。

正直、そこまで好きな演目というわけでもなかったのだけれど、以前聞いた時とは人物の掘り下げ方、人物描写の深見が段違いだった。気が弱く、根は悪人ではない泥棒。気は強いが、次第に赤ん坊に情を移す様子がよくわかるその妻。そして、娘を行方知れずにしてしまった小間物屋の旦那さんの悔恨と、その口から語られるその御寮さんの辛い心情。それを知って崩れ落ちるように膝をつく元泥棒。登場人物たちの心の流れが見事に結びついて、納得の結末。最初聞いた時は、元泥棒が詫びを入れるシーンは少し唐突にも感じられたのだけれど、今日は納得させられることしきりだった。新作の演目を演者さんが練って育てていくというのはこういうことに違いない。仁鶴師匠思い出の「青菜」、米朝師匠思い出の「住吉駕籠」、その間にはさむだけの思い入れや自信があったのだろう。いいものを聴かせていただいた。

 

二豆さんの道具屋、最近は道具屋も省略されたものを聞くことが多かったので、省略されていないたっぷりしたものを書くのは久しぶりで、新鮮だった。終盤、少し端折り気味に思えるところもあったけれど、いい高座だったと思う。得した。

「青菜」、「二葉の師匠の米二です」から入り、会場から笑い。先日の二葉さんのNHK新人落語大賞受賞を受けてのもの。史上初の女性の受賞。しかも満点だもんなぁ。本当に面白い、信頼できる落語家さんになられた。

落語の楽しさを教えてもらったのは、ラジオで聞いた仁鶴師匠の「青菜」だと言った後に「白状しておきますけれど、稽古してもらったの枝雀さんですけど」

で、本編。不思議なもので、笑いのない場面でも引き込まれてしまって聴いているのが楽しい。これは今日はいい高座が聞けそうだと予感した。その後の「火事場盗人」が素晴らしかったのは、先に書いた通り。

 

中入後、仁智さんはいつも通りの楽しいマクラに、いつも通りの楽しい「スタディ・ベースボール」。泣かせる演目であった「火事場盗人」の雰囲気をガラリと陽気で軽いものに変えてくれる。

最後「住吉駕籠」。思えばこれも聞くのは久しぶりな気がする。軽やかに笑わせてもらって、軽い気分で会場を後に。いい落語会だった。f:id:banraidou:20211128205244j:image
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