私の読書量なんて知れたものだけれど、今まで見聞きしてきた落語を扱った小説やドラマの中でも、「落語」の元々の噺をどう扱うかという点において、このコミックは一番上手を行っていると思う。
物語は廃部寸前の落語研究会にアンナが入会するところから幕を開ける。
上京したてで右も左もわからない中で、偶然耳にした落語に魅せられて入会したアンナ。そこで待っていたのは抜群の技量を誇るものの人前では極度に緊張してしまう茶子、大物落語家の孫で枕はうまいが肝心の噺はからっきし(自覚なし)なマチ子。アンナも、非の打ちどころのない外見ながら口を開くと津軽弁全開という、落語家としては少々苦労しそうなタイプ。
そんな3人だが、部を存続させるため、大学落語選手権で上位入賞を目指して、落語の道に踏み込んでいくのだった。
あらすじはこんなところ。
クライマックスで演じられる噺には思わず感動すること請け合いだ。
元の噺をインスピレーションの源にするのでもなく、また、元の噺を現代風に置き換えるのでもなく、現在のストーリーの中で元々のストーリーが受け入れられ、なぜ主人公がその噺を選択したのかに意味を持たせ、元の噺と現在のストーリーがクライマックスに向けて収束していく。
しかも笑えたり泣けたりするのだ。なんと贅沢な。なんと美しい。
この作品は、落語を扱ったフィクションとしても、ストーリーものの4コマとしても超一級品だ。
個人的なお気に入り度は、「まつのべっ」や「棺担ぎのクロ」、「ゆゆ式」や「ラディカルホスピタル」、「ふぉんこねくと!」や「みそララ」を上回ってしまった、と書いたら、4コマを好んで読む人には、私がどのくらい「おちけん」を気に入ってしまったか伝わると思うんだが。
とにもかくにも、必読、ですよこれは。