青山ブックセンターが閉鎖して、なんか、みんな大騒ぎしている。
まあ、自分のお気に入りの書店が閉鎖したってんだから、感傷的にもなるわな。
で、私はというと、皆が大騒ぎしている、それを頭で理解は出来るのだけれど、だからどうしたという冷めた感じが否めない。
なぜか?
それは、私が青山ブックセンターとはついぞ縁の無い、地方在住者だからだ。
田舎者が何を言っているんだ、と思う人もいるだろうけど、なんかね、いままでが恵まれていたというだけじゃないのか、ある書店の閉鎖で活字文化の進退がどうこういうところまで言ってしまうってのは勘違いじゃないのか、ってのがあるんですわ。まあ、田舎者の僻みかもしれんけど。
私は大学卒業まで新潟にいたのだけれど、一番読書に夢中になった時期、お世話になったのは、全国に何店舗も展開する大型書店ではなかったんだ。紀伊之国屋は新潟にもあったから利用したことはもちろんあったけれど、むしろ地元の、品揃えに優れた新潟市内の万松堂や、痒いところに手が届いた新津市の英進堂、いつまでも時間をつぶせた大学の生協、大学周辺の古本屋、SFの品揃えが充実していた五泉市の古本屋である古文堂、駅ビルに入っていたヴィレッジ・ヴァンガード、そういった書店だった。おまけに、他にも北光社なんていう書店もあって、選択の余地もあった。
(もう長いこと新潟の街を歩いていないので、これらの書店がどうなっているのかわからない。ヴィレッジ・ヴァンガードが撤退したのは知っているんだけれど)
つまりあれだ、地方にだって読書を楽しんでいる人たちが大勢いて、そういう人たちを育んできたのは、青山ブックセンターやら、紀伊之国屋やら、リブロやら、ブックファーストやら、書泉グランデやら、ジュンク堂書店やらといった全国の(とはいっても限られた)都市部に展開する大型書店ではなく、地元の書店だったわけでしょ。
そういった地元の書店も、たくさん倒産しているわけですよ。これは、日本にも遅れてやってきたモータライゼーションとやらで、郊外型の店舗というモデルが発達し、従来の街の中心に位置する大型店舗というモデルが衰退していくという、大きな流れに沿ったものでもあるんだけれど。
で、とにかく地方の書店もガンガン潰れた。いわゆる街の書店なんかはもう悲惨。私の生まれ故郷の小さな町では、もう何年も前に一軒も書店がなくなっちまったよ。
この時、どのくらい多くの人が、「読書という文化の危機」を訴えたんだろう。
それでも、私や周りの本好きたちは、本を購入し、貪るように読んでいたんだ。
そして、つい最近青山ブックセンターが潰れた。
これも大きな流れに沿ったものだわな。今時、家賃は高いわ集客はさほど見込めないわで、都心部にビジネスチャンスを求める小売業者など、ほとんどいない。
安い家賃で、そこそこの集客が見込める郊外のほうが、利益が出るんだよ、今のところ。今後はわからんが。
もうあえて言ってしまうけれど、当然じゃねえか、潰れるのも。
全部が全部潰れることもないだろうが、全部が全部生き残ることもありえない。あたりまえだ。
そりゃ、自分のお気に入りの本屋が無くなったらさびしいってのはわかるんだがね。
もう、ぶっちゃけちゃうと、なんかむかつくんだよな。俺のは田舎者の僻みだが、いわゆる都心部の驕りってのも、多分にあると思うぞ。