万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

ハナシにならん!

一気呵成に読み終わってしまった。
相変わらず主人公竜二の姉弟子である梅春姉さんは魅力的だが、読み終わった後、無性に落語を聴きたくなった。これって凄いことだよな。
前作「ハナシがちがう!」の解説で桂文珍師匠が著者から聞いた言葉としてこのように書いている。引用してみると

「落語がらみの本は多く出版されていますが、上方落語を間違って紹介しているものや、中には上方落語は絶滅したと書かれている本もあり、正しく上方落語の楽しさを伝える方法として、得意なミステリーと合体させることで作品を書こうと思いました」


落語の描写が活き活きとしている訳だ。主人公の落語への真摯な姿勢、笑いへの真摯さ姿勢が心地よい訳だ。


こういった小説って、本当に凄いと思う。何が凄いって、「小説」というメディアでそれ以外のメディアの素晴らしさ、魅力を表現してしまうんだよ? 凄いと思わない?
これと同じ凄さを感じた本というと菅浩江永遠の森 博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)があるね。この本も、架空の前衛的な美術品が如何に素晴らしいかを文章で表現するという離れ業に挑戦し、見事に成功したという類稀な本だった。
表現する手段・媒体をも飛び越してしまう「芸術」ってのは素晴らしいな、と、なんとも素朴な感想だけれども、偽らざる今の気持ちですよ。