万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

勝手にSFだけでハヤカワ文庫100冊 その1 非英語圏強襲(1〜4)

以前からハヤカワ文庫はHOT HITと題してフェアを行っていたんだけれども、それがこの秋からハヤカワ文庫の100冊としてリニューアルするのだそうで。うち10タイトルをマニア垂涎の復刻・復刊が占めていたり、25タイトルが新しいカバーになったり、フェア参加作品をすべて網羅したカラー・カタログを作ったりとかなり本気モードに入っているみたいだ。
そういうのを見ると、収集癖のある本読みってのはいてもたってもいられなくなるってものであって、ねえ旦那。
思わずSF関係だけでハヤカワ文庫から100タイトル、リストアップしたりしてしまった。
いや、いざリストを眺めてみると、有名な作品を実は読んでいないなんてのがかなりあったりして、どうにもこうにも変なリストなんだが。例えば、アシモフファウンデーションシリーズが未だに未読だったりする。いや、持ってはいるんですよ、持っては。つーか、映画化するってんでこないだ買ったんだけどさ(笑)。
せっかく変なリストを作ったんだから、SF読みの酒の肴にでもしていただこうとブログのネタにしてみると、そういった次第でありまして……

1・「ストーカー」A&B・ストルガツキー
2・「レ・コスミコミケイタロ・カルヴィーノ
3・「砂漠の惑星」スタニスワフ・レム
4・「宇宙創世期ロボットの旅」スタニスワフ・レム

で、非英語圏ヨーロッパの作家の作品から始めるのだけれど、まあ深い意味はない。
英語圏のSFでハヤカワ文庫というと、カレル・チャペックの「山椒魚戦争」あたりも挙げなければいけないのだけれど、いかんせん未読のため見送り。
ストルガツキー兄弟の諸作をもっと上げたいところだけれど、いや、ストルガツキー兄弟の作品ってなかなか見つけにくい印象があるのだけれど、どうかな? そんな中でも「ストーカー」は今でも手に入る優等生にして傑作。異星文明の得体の知れなさ、作品内における特異な扱い方は強い印象を残す。
たまに「あ、これ『ストーカー』へのオマージュだよね」という作品と出合うことなんかもしばしばあったり。今思い出せるのでいうと、そうだな、やまむらはじめの「蒼のサンクトゥス」とか。特に人類を意識するでもなくそこに存在する未知の特殊地帯。特殊地帯からの不可思議な影響。また、それらに複雑な感情を抱きつつも寄り集まっていく人々。それらはストーカーへのオマージュに他ならない。


東欧の巨人レムも、人類とは異なる文明・知性を扱う手腕では定評がある。というか、こっちのほうが有名か(笑)。謎が解かれる快感ではなく、謎があまりにも強固であるが故に撥ね返されてしまう快感とでもいいますか。映画化もされた「ソラリス」(「ソラリスの陽のもとに」)と「砂漠の惑星」「エデン」は、ファーストコンタクトテーマの三部作と称される。もっとも知的なSFを読みたいというのなら、レムを避けて通ることは絶対に出来ない。
……なーんていうと堅い感じか。いや、実際堅い作品も多く書いているんだけれど、その一方で、何ともひねくれたユーモアをも持ち合わせている人で。その系統での代表作が「宇宙創世記ロボットの旅」といってもいいんではなかろうか。ロボットの求道者? で、学校で「竜概論」を論じたり、サイバネティック小咄を披露したりって、なんだよそれ!(笑)
もっともノーベル賞に近い所にいたSF作家は、ハインラインでもアシモフでもクラークでもディックでもバラードでもなく、レムであったと今でも思っている。


最後はもう紹介するまでもないイタリアの大物カルヴィーノの宇宙的バカ話「レ・コスミコミケ」。宇宙の歴史や地球の歴史の決定的な瞬間が目撃談として語られるという、なんともバカとしか言いようがない話。すごい人が本気でふざけると本当にすごい。その真剣な悪ふざけぶり。ぱっと思いつくのは筒井康隆(読後感はかなり違うけど)。まあ、そのくらいすごいレベルに二人ともいるのだという話で。
「柔かい月」も同じ趣向の短編集なのだけれど、「レ・コスミコミケ」の方が訳がこなれて読みやすかった覚えがある。で、「あ、『レ・コスミコミケ』の人だ!」ってんでカルヴィーノの他の作品に手を出して、なんどか挫折したりするといいと思うよ! 俺みたいに!