万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

「生命の歴史は繰り返すのか?」の感想

「生命の歴史は繰り返すのか? 進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む」(ジョナサン・B・ロソス/化学同人

大変に素晴らしい本だった。
進化の行く末は偶然性が支配するのか、それとも決まっているのか。前者の親玉がスティーブン・J・グールドで、自身の信仰の影響も大きく受けたであろう反対者がサイモン・コンウェイ・モリスである。この両者の論争にある程度の結論を出そうというのが本書だ。用いる武器は実験。言い合ってるばかりじゃなくて実際に調べてみようぜ、というわけだ。
ユーモアをたっぷり交えてわかりやすい文章。紹介される実験も知らないものが多くエキサイティングだ。なにより、ある疑問に対する回答がまた新たな疑問を呼び、それに対する回答がまた新たな疑問を……という全うすぎる展開がまるでミステリ仕立てのように展開されていて、とても楽しい。そしてそれが頂点に達するのが、ミステリ的に言えば、いわば決定的な証拠を見つける10章と、科学哲学がそのなぞ解きを始める11章だ。
趣味でとはいえ進化の本をある程度読んでいると、「新奇な事例」に遭遇することはしょっちゅうだが「新奇な見方」に遭遇することは減ってくる。あー、これ、あの本で〇〇も言っていたあれね、というわけだ。
そんな中、名著「ワンダフル・ライフ」でグールドが本当に指示していたこととはどういうことだったのか、実験を積み重ねたうえで哲学的な解釈を加えることで新たな光を当てて見せてくれた本書は、本当に素晴らしい本だった。「ワンダフル・ライフ」でドキドキワクワクした人はぜひ読むべきだ。